• 十二人の兄弟

    グリム童話
    むかしむかし、ある国に、元気いっぱいの十二人の王子様たちがいました。王様とお妃様は、もうすぐ十三番目の赤ちゃんが生まれるのを楽しみにしていましたが、王様は一つ、ちょっぴり変わったことを考えていました。「もし次に生まれるのが女の子だったら、その子に国を全部あげたい。だから、王子たちには…うーん、ちょっと遠くへ行ってもらおうかな。」

    お妃様はそれを聞いてびっくり!かわいそうな王子たちのために、こっそり末っ子のベンジャミン王子に言いました。「もし女の子が生まれたら、お城の塔に赤い旗を立てます。そうしたら、みんなで森の奥へ逃げて。もし男の子だったら、白い旗を立てるから、安心して帰ってきていいわ。」

    毎日、王子たちは塔を見上げました。そしてある日、ひらひらと赤い旗が揚がったのです!王子たちはがっかりして、約束通り森の奥深くへと入っていきました。そして、「僕たちを追い出した女の子なんて、見つけたらやっつけてやる!」と、ちょっぴり怒って誓いを立てました。

    さて、お城では可愛いお姫様が生まれました。お姫様はすくすくと育ち、自分が十二人のお兄様たちがいたことを知ると、とても悲しくなりました。「私がお兄様たちを探しに行くわ!」

    お姫様は森の中をどんどん進み、小さな小屋を見つけました。中から出てきたのは、なんとベンジャミンお兄様!二人はすぐに仲良くなりました。でも、他のお兄様たちは女の子を見ると怒ると聞いて、お姫様はこっそり隠れることにしました。

    やがて他のお兄様たちが帰ってきました。ベンジャミンお兄様が「可愛い妹だよ!」と紹介すると、最初はびっくりして怒っていたお兄様たちも、お姫様の優しさに触れて、すぐに大好きになりました。みんなで仲良く小屋で暮らし始めました。

    ある日、お姫様がお兄様たちのために、庭に咲いていた十二本の白いユリの花を摘みました。そのとたん、お兄様たちはカラスに姿を変え、空へ飛び去ってしまったのです!お姫様が泣いていると、一人のおばあさんが現れて言いました。「あれは魔法のユリじゃ。お兄様たちを元に戻したければ、七年間、一言も口をきかず、笑ってもいけないのじゃよ。」

    お姫様は固く決意し、言葉を失ったまま森で暮らしました。ある日、狩りをしていた隣の国の若い王様がお姫様を見つけ、その美しさに心を奪われました。お姫様は話すことができませんでしたが、王様は優しくお城へ連れて帰り、お妃にしました。

    しかし、王様のお母さんは、話さないお姫様をよく思いません。「あんな気味の悪い娘、何か悪いことを企んでいるに違いない!」と、次々とお姫様の悪口を言いふらしました。王様は信じませんでしたが、お姫様は弁解することができません。とうとう、お姫様は火あぶりの刑にされることになってしまいました。

    火がつけられようとした、まさにその時!七年間の最後の日が終わったのです。空から十二羽のカラスが舞い降り、みるみるうちに十二人の立派な王子様の姿に戻りました!お姫様はついに声を取り戻し、「お兄様たち!」と叫びました。

    そして、これまでの全ての出来事を王様に話しました。王様は真実を知り、意地悪だったお母さんを遠いところへ追い払い、お姫様とお兄様たちと、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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