• 暴風雨が襲った時

    アンデルセン童話
    ある晴れた日のこと、おもちゃの兵隊さんが窓辺に立っていました。この兵隊さん、実はちょっぴり特別。生まれた時から片足が少し短かったのです。でも、彼はいつもシャキッと立っていました。

    窓の向こうには、紙でできた可愛らしい踊り子さんがいました。彼女も片足で美しく踊っているように見えました。兵隊さんは、一目で彼女のことが大好きになりました。「なんて素敵な人だろう。僕のお嫁さんになってくれたらなあ」と、兵隊さんはうっとり見つめていました。

    その時です!ビューンと強い風が吹いて、兵隊さんは窓からポーンと外へ!あっという間に、道端の水たまりに落ちてしまいました。まるで小さな池のようです。

    そこへ通りかかった男の子たちが、兵隊さんを見つけました。「わあ、兵隊さんだ!船に乗せてあげよう!」男の子たちは新聞紙で船を作り、兵隊さんを乗せました。

    紙の船は、雨水が集まってできた小川をぐんぐん進みます。まるで嵐の中の冒険みたい!ザブーン、ザブーンと波が来て、船は揺れましたが、兵隊さんはしっかり立っていました。彼は勇敢な兵隊さんですからね。

    暗い溝の中に入ると、大きなネズミが「おい、パスポートを見せろ!」と追いかけてきましたが、船はもっと速く進んで、ネズミを置き去りにしました。

    とうとう小川は大きな運河に合流し、船はくるくると回って沈んでしまいました。兵隊さんは水の中に…。その時、大きな魚がパクン!兵隊さんを飲み込んでしまったのです。

    魚のお腹の中は真っ暗で、何も見えません。「ああ、もう踊り子さんには会えないのかな…」兵隊さんは悲しくなりました。

    でも、しばらくすると、パカッ!と明るくなりました。なんと、魚がお料理されるために市場で買われ、お家の人にさばかれたのです。そして兵隊さんは台所に戻ってきました!しかも、びっくりすることに、そこは元の持ち主の家でした。

    そして、なんと!あの美しい踊り子さんも同じ部屋にいました。兵隊さんは嬉しくてたまりません。踊り子さんも兵隊さんを見て、にっこりしたように見えました。

    でも、運命はいたずらです。小さな男の子が、理由もなく兵隊さんを暖炉の火の中にポイッと投げ入れてしまいました。兵隊さんの体は、あっという間に熱くなりました。

    その時、さっと風が吹いて、紙の踊り子さんもひらひらと暖炉の中へ。兵隊さんの隣に舞い降りました。

    熱い炎の中で、兵隊さんと踊り子さんは、そっと寄り添いました。そして、兵隊さんは溶けて小さなハートの形になり、踊り子さんのそばには、キラキラ光る小さな飾りが残りました。二人はいつまでも一緒でした。

    1795 閲覧数