雪がふわふわと舞い落ちる、とっても寒い大晦日の夜のこと。小さな女の子が一人、寒さにふるえながら町を歩いていました。素足に、大きすぎるぶかぶかの上着。ポケットには、マッチの束がいくつか入っています。

「マッチはいりませんかー？マッチはいかがですかー？」

女の子は、かじかむ声で呼びかけますが、忙しそうに行きかう人々は、誰も足を止めてくれません。お家では、きっと暖かい暖炉があって、おいしいごちそうが並んでいるのでしょう。女の子のお腹はぺこぺこ、体は芯から冷え切っていました。

もう、誰もお客さんはいないみたい。女の子は、あるお家の壁と壁の間に、小さくうずくまりました。あまりの寒さに、指先の感覚もなくなってきました。

「そうだわ、マッチを一本だけ…」

女の子は、そっとマッチを一本取り出し、壁でシュッと擦りました。ポッ！と明るい炎が燃え上がり、まるで目の前に大きなストーブが現れたみたい！「わあ、あったかいなあ」女の子が冷たい手をかざして、足を伸ばそうとした瞬間、しゅーっと火は消えてしまいました。ストーブも一緒に。

「もう一本だけ…」

またマッチを擦ると、今度は壁が透き通って、お部屋の中が見えました。テーブルには、おいしそうな七面鳥の丸焼き！湯気が立っていて、ナイフとフォークもちゃんと添えられています。七面鳥が、お皿から飛び出して、女の子の方へよちよち歩いてくるではありませんか！でも、そのとき、またマッチの火が消えて、目の前には冷たい壁があるだけでした。

「もう一本…お願い！」

三本目のマッチが燃えると、そこには大きなクリスマスツリーが立っていました。何千本ものろうそくがキラキラと輝き、お店のショーウィンドウで見たどんな飾りよりもずっときれいでした。女の子が手を伸ばすと、ろうそくの光は空へ昇っていき、お星さまになったように見えました。

そのとき、一つのお星さまが、すーっと尾を引いて落ちていきました。
「誰か、お空にのぼっていくんだわ」
女の子はつぶやきました。亡くなったおばあちゃんが、「流れ星はね、誰かの魂がお星さまになるしるしなんだよ」と教えてくれたのを思い出したのです。おばあちゃんは、世界でたった一人、女の子に優しくしてくれた人でした。

「おばあちゃん…」

女の子は、壁にもう一度マッチを擦りました。すると、炎の光の中に、優しかったおばあちゃんが、にこにこと立っているではありませんか！
「おばあちゃん！」女の子は叫びました。「お願い、私を連れてって！マッチの火が消えたら、おばあちゃんもいなくなっちゃうんでしょう？」

女の子は、おばあちゃんに消えてほしくなくて、慌てて残りのマッチを全部束にして、シュボッ！と火をつけました。あたりが、真昼のようにパッと明るくなりました。おばあちゃんは、今まで見たこともないくらい美しく、大きく見えました。おばあちゃんは女の子を優しく抱きしめると、二人で一緒に、キラキラと輝く光の中へ、高く高く昇っていきました。そこはもう寒くも、お腹が空くこともない、暖かい天国でした。

次の朝、夜明けの冷たい光の中に、小さな女の子が壁にもたれて座っていました。頬は赤く、口元には微笑みを浮かべて。手には、燃えかすのマッチの束を握りしめていました。
「かわいそうに、暖まろうとしたんだねえ」
人々はそう言いました。でも、女の子が前の晩にどんなに素敵なものを見て、どんなに幸せな気持ちで、大好きなおばあちゃんと一緒に新しい年を迎えるために天国へ行ったのかは、誰も知りませんでした。

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