ある朝、雷の神様トールが目を覚ますと、びっくり仰天！大切な魔法のハンマー、ミョルニルがどこにも見当たらないのです。「大変だ！わしのミョルニルがないぞ！」トールは大慌て。

そこに、いたずら好きだけど賢いロキがやってきました。「どうしたんだい、トール？そんなに慌てて。」
トールが事情を話すと、ロキは「ふむ、それは巨人の仕業に違いない。ちょっと調べてみよう」と言いました。

ロキは美しい女神フレイヤの羽の衣を借りて、巨人の国ヨトゥンヘイムへ飛んでいきました。
そこで巨人の王様スリュムに会うと、スリュムはニヤリと笑って言いました。「ああ、ミョルニルならわしが隠したよ。返してほしければ、美しいフレイヤをわしの嫁に連れてこい！」

ロキはアスガルドに戻り、みんなに報告しました。フレイヤはカンカンです。「私が巨人の嫁ですって？絶対にいやよ！」
困った神様たち。するとロキがポンと手を打ちました。「いい考えがある！トール、君がフレイヤのふりをして、花嫁としてスリュムのところへ行くんだ！」
「な、なんだって！？わしが女装を？」トールは真っ赤になりましたが、ハンマーを取り返すためには仕方ありません。

トールはフレイヤのウェディングドレスを着て、顔にはベールをかぶりました。ロキも侍女に変装して一緒について行きます。
巨人の国では盛大な結婚式の準備がされていました。スリュムは大喜びで「花嫁」を迎えます。

宴会が始まると、トールは花嫁らしからぬ勢いで食べ物をパクパク、お酒をゴクゴク。
スリュムが「おや？フレイヤ殿はずいぶん食いしん坊だなあ」と不思議そうに言うと、ロキがすかさず言いました。「スリュム様に会えるのが嬉しくて、何日も何も召し上がっていなかったのですわ！」
スリュムがベールの下のトールの鋭い眼光に気づいて「フレイヤ殿の目は、なんだか燃えるように鋭いな…」と言うと、ロキはまた言いました。「スリュム様との結婚式が楽しみで、何日も眠れなかったのですわ！」
スリュムは「なるほど！」とすっかり信じ込みました。

いよいよ結婚の儀式です。スリュムは言いました。「さあ、ミョルニルを持ってきて、この結婚を清めよう！」
ミョルニルがトールの膝の上に置かれた瞬間、トールはガシッとハンマーを掴みました。ベールを跳ね上げると、そこには怒りに燃えるトールの顔が！
「よくもわしのハンマーを盗んだな！」
トールはミョルニルを振り回し、あっという間に巨人たちをこらしめました。

こうしてトールは無事にミョルニルを取り返し、ロキと一緒に意気揚々とアスガルドへ帰っていきました。巨人たちはもう二度とトールのハンマーを盗もうなんて思わなかったそうですよ。

2149 閲覧数