三人の黒いお姫様
グリム童話
むかしむかし、というほど昔でもないけれど、あるところに、仕事を探している元気な若者がいました。若者は森の奥へ奥へと進んでいくと、古くて大きなお城を見つけました。なんだか、ちょっぴりこわい雰囲気です。
お城の門をたたくと、中から三人の美しいお姫様が出てきました。でも、三人とも真っ黒な服を着ていて、とても悲しそうな顔をしています。
「こんにちは。何かお手伝いできることはありますか?」若者が尋ねると、一番年上のお姫様が話し始めました。
「私たちは悪い魔法使いに呪いをかけられてしまったのです。この呪いを解くには、勇敢な人が三日間、このお城で夜を過ごし、どんなことがあっても一言もしゃべらず、怖がらずにいなければなりません。」
二番目のお姫様が続けます。「これまで何人もの人が挑戦しましたが、みんな怖がって逃げ出してしまいました。」
一番若いお姫様が小さな声で言いました。「もし成功すれば、私たちは元の姿に戻り、あなたはこの国で一番幸せになれるでしょう。でも、もし声を出してしまったら…」お姫様はそれ以上言えませんでした。
若者は少し考えましたが、「よし、やってみよう!僕ならきっと大丈夫だ!」と心に決めました。
最初の夜。若者がお城の一室でじっとしていると、どこからかヒューヒューと風の音や、カタカタと何かが揺れる音が聞こえてきました。壁には変な影がうごめいています。でも若者は、ぐっとこらえて、一言も口にしませんでした。「へいき、へいき」と心の中でつぶやきます。
二番目の夜。今度は、もっとたくさんの不思議なことが起こりました。小さなオバケのようなものが現れて、若者の周りを飛び回ったり、耳元で変な声を出したり、ちょっかいを出してきました。「わっ!」と声を出しそうになるのを、若者は必死でこらえました。口をきゅっと結んで、じっと耐えました。
三番目の夜。これが一番大変でした。もっとたくさんのオバケたちが、変な顔をしたり、くすぐろうとしたり、大きな音を立てたりして、若者を驚かせようとします。若者は目をぎゅっとつぶり、歯をくいしばって、「ぜったい、ぜったい声を出さないぞ!」と頑張りました。まるで石のお人形になったみたいに、ピクリとも動きません。
そして、朝の光が部屋に差し込んできました。若者がゆっくり目を開けると、びっくり!目の前には、真っ黒だった服が美しいきらびやかなドレスに変わり、にこにこ笑っている三人の輝くばかりのお姫様たちが立っていました。お城も暗くて古ぼけた感じだったのが、明るくピカピカになっています。
「ありがとう!あなたが助けてくれたおかげです!」お姫様たちは大喜びです。
若者は、一番心優しかった末のお姫様と結婚して、お城でいつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
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