• ロバと主人

    イソップ寓話
    ある晴れた日のこと、働き者のロバくんが、ご主人さまと一緒に森へ出かけました。ロバくんは、毎日ご主人さまの大切な荷物を運んでいて、ご主人さまも、そんなロバくんをとても頼りにしていました。

    その日も、二人は山道をえっちらおっちら歩いていました。すると、おっと、大変!ロバくんが、古くて深い井戸の中に、ストンと落ちてしまったのです。
    「ヒヒーン、助けてえ!」ロバくんは悲しそうに鳴きました。
    ご主人さまはびっくり仰天。「こりゃ大変だ!どうやって助けよう?」
    井戸はとても深くて、ロープで引っ張り上げるのも難しそうです。ロバくんももう年を取っていたので、ご主人さまは考え込みました。
    「うーん、かわいそうだが、助けるのは無理かもしれない。それに、このままではロバくんも苦しいだろう。この井戸は危ないから、いっそのこと土で埋めてしまおう。」
    そう決心すると、ご主人さまはシャベルを持ってきて、井戸の中に土をザッザッと投げ入れ始めました。

    土が背中に落ちてきて、ロバくんは最初、とても悲しくなりました。「ご主人さま、ひどいよお!」
    でも、次の瞬間、ロバくんはいいことを思いつきました。
    「そうだ!背中にかかった土を、ブルブルッて振るい落とせばいいんだ!」
    ロバくんが体をブルブルッと震わせると、背中の土は下に落ちて、足元にたまります。ロバくんは、その土をキュッキュッと踏み固めました。

    ご主人さまがまた土を投げ入れます。ロバくんはまた体をブルブルッ。そして土を踏み固めます。
    何度も何度も繰り返すうちに、井戸の中の土はだんだん高くなってきました。
    ご主人さまは、ロバくんが土に埋もれてしまうと思っていたのに、なんだかロバくんが少しずつ上がってくるので、目を丸くしました。
    「あれ?あれれ?」
    そしてとうとう、ロバくんは井戸のふちまで上がってきて、ぴょんと外に飛び出すことができたのです!

    ご主人さまは、賢いロバくんを見て、大喜び。
    「すごいぞ、ロバくん!君はなんて賢いんだ!」
    ロバくんは、ちょっぴり得意そうに「ヒヒーン!」と一声鳴きました。
    大変なことが起きても、あきらめずに頭を使えば、きっといい方法が見つかるものですね。

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