• 株を守りて兎を待つ

    中国寓話
    太陽がキラキラ輝く、気持ちのいい朝のことです。畑では、ひとりの農夫のおじさんが、せっせと働いていました。おじさんは、汗をふきふき、クワで土を耕しています。

    そのときです!ぴょーん!と、一匹のうさぎが、ものすごい速さで走ってきました。うさぎは何かにびっくりしたのかもしれません。そして、あらら、大変!うさぎは、畑の隅にあった木の切り株に、ドーン!と頭をぶつけてしまいました。そして、そのまま動かなくなってしまったのです。

    おじさんはびっくり。「おや、これはラッキーだ!今夜はうさぎ鍋にしよう」と、うさぎを持って帰りました。

    次の日から、おじさんは考えました。「そうだ!毎日ここで待っていれば、またうさぎが切り株にぶつかってくれるかもしれないぞ!」
    そう思うと、おじさんは畑仕事をやめて、毎日切り株のそばで座って待つことにしました。

    一日待ちました。うさぎは来ません。
    二日待ちました。やっぱり来ません。
    何日も何日も待ちましたが、うさぎは一匹も切り株にぶつかりませんでした。

    そのうち、おじさんの畑は草ぼうぼう。お米も野菜も、なーんにもとれません。
    村の人たちは、「あのおじさん、働かないで何してるんだろうねえ」と、笑うようになりました。
    おじさんは、ただぼんやりと切り株を見つめるばかりでした。

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