蛇を画いて足を添える
中国寓話
むかしむかし、あるお屋敷に、何人かの家来たちがいました。ある日、ご主人様が彼らにご褒美として、とっても美味しそうなお酒を壺に一つくれました。
「わあ、美味しそうなお酒だ!」
「でも、お酒は一壺だけ。みんなで分けるにはちょっと少ないねえ。」
家来たちは困ってしまいました。
すると、一人が言いました。
「そうだ!地面に蛇の絵を描いて、一番早く上手に描けた人がこのお酒を飲むっていうのはどうだい?」
「それはいいね!」みんな賛成しました。
さあ、競争の始まりです。みんな、木の枝を拾って、地面に蛇の絵を描き始めました。シュルシュル、ニョロニョロ…みんな真剣です。
その中で、一人の男が、あっという間に蛇を描き上げました。
「できたぞ!一番だ!」
彼は得意になって、お酒の壺に手を伸ばそうとしました。でも、他の人たちはまだ描いています。
「ふふん、待っている間に、もっとすごい蛇にしてやろう。」
そう思った男は、なんと、描き終わった蛇に足をちょんちょんと描き足し始めました。「蛇に足があったら、もっと速く走れるだろう!」なんて考えたのかもしれません。
その時、もう一人の男が「できた!」と叫びました。彼が描いたのは、足のない、本物そっくりの蛇でした。
彼は、足を描き足している男を見て言いました。
「おいおい、蛇に足なんかないじゃないか。それは蛇じゃないよ。」
そして、さっとお酒の壺を取り上げ、「このお酒は僕のものだ!」と言って、美味しそうに飲み始めました。
最初に蛇を描き終えた男は、ぽかんとしています。余計な足を描いたばっかりに、せっかくのお酒を飲みそこねてしまいました。がっかりです。
このお話は、いらないことをしてしまって、かえって失敗しちゃうことがあるよ、ということを教えてくれています。
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