• ほんとうの花嫁

    グリム童話
    あるところに、とても働き者で心優しい女の子がいました。でも、この女の子には意地悪な継母(ままはは)と、わがままな義理の妹がいたのです。二人はいつも女の子に難しい仕事ばかり押し付けて、自分たちは楽をしていました。

    ある寒い冬の日、継母は言いました。「さあ、森へ行って、かごいっぱいのイチゴを摘んでおいで。できなければ、家には入れないよ!」
    女の子は困りました。「まあ、冬にイチゴなんて、どこにも咲いていないわ…」
    それでも女の子は、寒い森へとしぶしぶ出かけました。森の奥で、女の子がしょんぼりしていると、小さな可愛らしいおばあさんが現れました。
    「どうしたんだい、お嬢さん?」
    女の子がわけを話すと、おばあさんはにっこり笑って、小さな笛をくれました。
    「この笛を吹いてごらん。きっといいことがあるよ。」
    女の子が笛を吹くと、あら不思議!目の前の雪がとけて、そこには真っ赤なイチゴがたくさん実っていたのです。女の子は大喜びでイチゴを摘み、かごいっぱいにして家に帰りました。

    継母と義理の妹はびっくりしましたが、すぐに次の無理難題を言いつけました。
    「今度は、穴のあいたスプーンで、あそこの大きな池の水をぜーんぶ汲み出しなさい!」
    女の子はまた困って池のほとりで泣いていると、またあのおばあさんが現れました。
    「この魔法のクルミを池に投げてごらん。」
    女の子がクルミを投げ入れると、池の水はあっという間に干上がり、底が見えるほどになりました。

    継母たちは悔しがりましたが、さらに難しいことを命じました。
    「一晩で、立派なお城を建ててごらん!できなければ、今度こそ追い出すからね!」
    女の子が途方に暮れていると、またおばあさんがやってきて、今度は小さな金のハンマーをくれました。
    「これで地面を三回叩いてごらん。」
    女の子が言われたとおりにすると、目の前にキラキラ輝く美しいお城が、あっという間に建ったのです!

    ちょうどその頃、その国の王子様がお妃を探していました。王子様は、素晴らしいお城を建てた娘がいると聞いて、女の子の家へやってきました。
    継母は慌てて、本当の娘である義理の妹を王子様の前に出し、「このお城は、うちの娘が建てたんですよ!」と嘘をつきました。
    王子様は義理の妹と結婚の約束をしかけましたが、どこからか小鳥たちが歌う声が聞こえてきました。
    「王子様、王子様、本当の花嫁はあちら。イチゴを摘んだのも、池の水を汲んだのも、お城を建てたのも、みんなあの優しい娘さん!」
    王子様が声のする方を見ると、隅っこで悲しそうにしている女の子を見つけました。
    王子様はすぐに全てを悟り、本当のことをした心優しい女の子こそ自分のお妃にふさわしいとわかりました。

    意地悪な継母とわがままな義理の妹は、自分たちの嘘がばれて、とても恥ずかしい思いをしました。
    そして、王子様と働き者で心優しい女の子は結婚し、いつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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