• 力持ちハンス

    グリム童話
    むかしむかし、というほど昔でもないけれど、ハンスという元気な男の子がいました。ハンスのお母さんはとっても優しくて、二人は森のそばの小さな家で、それはそれは仲良く暮らしていました。

    ある晴れた日、お母さんとハンスが森へきのこを採りに出かけました。「わあ、見て、お母さん!大きなきのこ!」ハンスが声をあげた、そのときです!がさがさっと茂みから、いかにも悪そうな顔をしたどろぼうたちが飛び出してきました。「へっへっへ、いいところに親子がいるぜ!」どろぼうたちは二人を捕まえると、暗くてジメジメした洞窟の奥へと連れて行ってしまいました。

    洞窟の中での生活は大変でした。でも、ハンスは負けません。お母さんはこっそりハンスに、外の世界のこと、そして遠くにいるお父さんのことを話して聞かせました。ハンスは「いつか、お母さんと一緒にここを出て、お父さんに会うんだ!」と心に誓い、毎日洞窟の中で体を鍛えました。石を持ち上げたり、壁を押したり。そうしているうちに、ハンスはびっくりするほど力が強くなっていったのです。

    何年か経って、ハンスはもう立派な若者です。ある日、ハンスは洞窟の隅にあった大きな木の丸太を見つけました。「これだ!」ハンスはその丸太を軽々と持ち上げると、手でへし折ったり、削ったりして、それは見事な太いこん棒を作り上げました。

    こん棒を肩にかつぐと、ハンスはどろぼうの親分がいるところへズンズン歩いて行きました。「おい、どろぼうの親分!おれたちをここから出してくれ!」
    親分は小さなハンス(と、まだ思っていました)を見て、鼻で笑いました。「なんだ、ちびすけ。生意気な口をきくじゃないか。」
    するとハンスは、持っていたこん棒をブンッ!と一振り。ゴォーッという風を切る音とともに、そばにあった大きな岩がメリメリと砕け散りました!
    どろぼうたちはみんな口をあんぐり。「ひ、ひえぇぇ!」親分は顔を真っ青にして震え上がりました。「わ、わかった!わかったから、もうやめてくれ!出て行っていい!宝も好きなだけ持っていけ!」

    「ありがとうよ、親分さん!」ハンスはニッコリ笑うと、お母さんの手を引き、どろぼうたちがため込んだ宝物の中から少しだけ金貨を袋に入れ、洞窟を飛び出しました。
    久しぶりに見るお日様の光は、なんて明るくて暖かいのでしょう!お母さんは嬉し涙を流しました。

    二人はまっすぐ、お父さんのいる家を目指しました。何年も会えなかったお父さんは、二人の姿を見るなり、驚きと喜びでいっぱいになり、ハンスを力強く抱きしめました。「おお、ハンス!お母さん!よくぞ戻ってきてくれた!」

    それからというもの、ハンスはその強い力で村の人たちの仕事を手伝ったり、困っている人を助けたりしました。そして、お父さんとお母さんと一緒に、いつまでもいつまでも、幸せに暮らしたということです。めでたし、めでたし。

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