• 花嫁選び

    グリム童話
    あるところに、一人の若い羊飼いがいました。彼は毎日、広い牧場で羊たちの世話をしていましたが、そろそろ素敵なお嫁さんがほしいなあと考えていました。でも、ただ顔が可愛いだけじゃなくて、心が優しくて、頭も良い人がいいなあと思っていました。

    そこで羊飼いは、村に住む三人の娘さんたちに、それぞれ一匹ずつ、自分の大切な羊を預けることにしました。「この羊を一番上手に世話してくれて、羊の毛で何か素敵なものを作ってくれた人と結婚しよう!」と彼は言いました。

    一人目の娘さんは、ちょっと面倒くさがり屋さんでした。羊に草をあげるのも時々忘れてしまうくらい。羊の毛で何か作るなんて、とても考えられませんでした。

    二人目の娘さんは、おしゃれが大好き。羊の毛をきれいに刈り取って、キラキラしたリボンやビーズで飾り付けた、小さな帽子を作りました。見た目はとっても可愛いけれど、あまり暖かそうではありません。

    三人目の娘さんは、とても働き者で、心が優しい子でした。毎日、羊に美味しい草を食べさせ、きれいな水を飲ませ、優しく世話をしました。羊はまるまると太って、とても幸せそう。そして、娘さんは羊の毛を丁寧に紡いで糸にし、ふんわりと暖かそうな手袋を編み上げました。

    しばらくして、羊飼いが娘さんたちの家を訪ねました。
    一人目の娘さんのところでは、羊は少し痩せていて、毛も汚れていました。
    二人目の娘さんのところでは、羊はまあまあ元気でしたが、娘さんが見せてくれたのは、飾りのついた小さな帽子でした。
    そして三人目の娘さんの家に行くと、羊はピカピカの毛並みで、元気いっぱい。娘さんは、彼に暖かそうな手袋を差し出しました。「これで寒い冬も、あなたの手が冷たくならないように」と、にっこり笑いました。

    羊飼いは大喜びです。「君こそ、僕が探していたお嫁さんだ!羊を大切にし、僕のことまで考えてくれるなんて、なんて優しくて賢いんだろう!」

    こうして、若い羊飼いと賢くて優しい娘さんは結婚して、たくさんの羊たちと一緒に、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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