二枚の硬貨
グリム童話
空から雪がふわふわと舞い落ちる、とっても寒い冬の日のことです。小さな村のはずれに、ひとりぼっちで暮らす、心優しい女の子がいました。女の子にはお父さんもお母さんもいなくて、持っているものと言えば、着ている服と、ポケットに入った一切れのパンだけでした。
「ああ、お腹がすいたなあ。どこか暖かいところはないかしら。」
女の子は、ぶるぶる震えながら歩いていきました。
すると、向こうからおじいさんがやってきました。おじいさんは、お腹がペコペコで、今にも倒れそうでした。
「お嬢ちゃん、何か食べるものを少し分けてはくれまいか。」
女の子はかわいそうに思い、ポケットから一切れのパンを取り出して、ぜんぶおじいさんにあげました。
「ありがとう、ありがとう。」おじいさんは、とても喜びました。
女の子がまた歩いていくと、今度は小さな男の子が泣いていました。
「ぼうや、どうしたの?」
「うわーん、寒くて頭がカチコチだよお。」
男の子は帽子をなくしてしまったのです。女の子は自分の被っていた帽子をぬいで、男の子の頭にそっと被せてあげました。
「これで少しは暖かいでしょう?」
男の子はにっこり笑いました。
もう少し行くと、今度は女の子が寒そうに体を丸めていました。
「大丈夫?寒いのね。」
女の子は、自分の着ていた上着を脱いで、その子に着せてあげました。
「わあ、あったかい!」
森の中まで来ると、もう一枚の服も、困っている別の子にあげてしまいました。とうとう女の子には、下に着ていたシャツ一枚しか残っていません。
「ふう、さすがに寒いわ。」
女の子が空を見上げると、満天の星がキラキラと輝いていました。
そのときです!不思議なことが起こりました。
空の星たちが、まるで金色の雨のように、キラキラ、サラサラと女の子の足元に降り注いできたのです。それはみんな、ピカピカの金貨でした!
そして、女の子が着ていたたった一枚のシャツは、いつのまにか、それはそれは美しい、ふわふわで暖かい麻の服に変わっていました。
女の子は、その金貨をたくさん拾い集めました。
そして、そのお金で、ずっとずっと幸せに暮らしたということです。おしまい。
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