森のはずれに、それはそれは貧しい木こりの一家が暮らしていました。お父さんと、意地悪な継母、そしてヘンゼルという男の子とグレーテルという女の子の四人家族です。

ある年、国中が大飢饉に見舞われ、食べるものがほとんどなくなってしまいました。困り果てた継母は、ある晩お父さんにこう言いました。「ねえ、あなた。このままじゃみんな飢え死にしちゃうわ。あの子たちを森の奥に置き去りにしてきましょうよ。」お父さんは悲しみましたが、どうすることもできませんでした。

それを聞いていた賢いヘンゼルは、そっと外へ出て、月の光でキラキラ光る白い小石をポケットいっぱいに拾いました。

次の朝、継母はヘンゼルとグレーテルを森へ連れて行きました。ヘンゼルは歩きながら、こっそり小石を道に落としていきました。森の奥深くで、継母は「ここで待っているんだよ」と言い残し、去ってしまいました。

夜になり、心細くなったグレーテルが泣き出すと、ヘンゼルは「大丈夫だよ」と言いました。月の光が昇ると、ヘンゼルが落とした小石がキラキラと光り、二人はそれを頼りに無事家へ帰ることができました。

継母はカンカンに怒りましたが、しばらくしてまた食べ物がなくなると、今度はもっと森の奥へ二人を連れて行こうとしました。ヘンゼルはまた小石を拾いに行こうとしましたが、戸には鍵がかかっていて出られません。

次の日、森へ行く途中、ヘンゼルは持っていたパンを少しずつちぎって道に落としていきました。しかし、森の小鳥たちがそのパンくずを全部食べてしまったのです！

日が暮れても、二人は帰り道を見つけることができませんでした。お腹もペコペコです。三日三晩さまよった後、二人は真っ白な鳥に導かれて、不思議な家を見つけました。なんと、その家はパンでできていて、屋根はケーキ、窓はピカピカの砂糖菓子でできていたのです！

「わあ、おいしそう！」二人が夢中で家をかじっていると、中からしわがれた声がしました。「カリカリ、ポリポリ、誰だい？私のおうちをかじっているのは？」

戸が開いて出てきたのは、優しい顔をしたおばあさんでした。「おや、道に迷ったのかい？さあ、お入り。温かいスープとベッドがあるよ。」

しかし、このおばあさん、実は子どもを捕まえて食べる、怖い魔女だったのです！

次の朝、魔女はヘンゼルを鳥かごみたいな檻に閉じ込め、グレーテルには家の仕事を言いつけました。「さあ、この子にうまいものをたくさん食べさせて太らせるんだよ。太ったら、丸焼きにして食べてやるからね！」

魔女は目がよく見えなかったので、毎日ヘンゼルの指を触って太り具合を確かめようとしました。賢いヘンゼルは、細い骨っこを差し出したので、魔女は「ちっとも太らないねえ！」と不機嫌でした。

とうとう我慢できなくなった魔女は、「もういい！ヘンゼルを料理するから、かまどに火をおこしな！」とグレーテルに命令しました。そして、「かまどに入って、火の具合を見ておいで」と言いました。

グレーテルは魔女の企みに気づき、「どうやって入るの？教えて、おばあさん」と尋ねました。

「どれ、こうやるんだよ」魔女が頭をかまどに突っ込んだ瞬間、グレーテルは、エイッ！と魔女をかまどに突き飛ばし、鉄の扉を閉めてしまいました！

魔女をやっつけたグレーテルは、急いでヘンゼルを助け出しました。家の中を探すと、宝石や金貨がザックザク！二人はそれをポケットいっぱいに詰め込み、家を飛び出しました。

森を抜けると、大きな湖がありましたが、アヒルさんが親切に二人を向こう岸まで運んでくれました。

やがて見覚えのある森に着き、二人はお父さんの家へと走りました。お父さんは二人を抱きしめて大喜び！意地悪な継母は、二人がいなくなってからすぐに病気で死んでしまっていたのです。

ヘンゼルとグレーテル、そしてお父さんは、魔女の家から持ってきた宝物のおかげで、もう貧乏に苦しむことなく、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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