• 三枚の蛇の葉

    グリム童話
    あるところに、それはそれは勇気のある若者がいました。でも、ちょっぴり貧乏でした。王様のために、一生懸命たたかいましたが、王様は十分なお礼をくれませんでした。がっかりした若者は、国を出て旅に出ることにしました。

    歩いていくと、高い塔のあるお城が見えました。なんと、その塔には美しいお姫様が閉じ込められていて、恐ろしい竜が見張りをしていたのです!お姫様は助けを求めていました。
    「よし、僕が助けるぞ!」
    若者は勇気をふりしぼり、剣を抜いて竜に立ち向かいました。激しい戦いの末、若者は見事に竜をやっつけ、お姫様を助け出しました。

    お姫様は若者の勇敢さに心を奪われ、すぐに大好きになりました。「あなたと結婚したいわ!」とお姫様は言いました。お父さんの王様も、娘を助けてくれた若者を気に入り、結婚を許しました。
    でも、王様は一つだけ、ふしぎな約束を若者にさせました。「もし、わしの娘が先に死んでしまったら、お前も一緒に墓に入らなければならないぞ。」
    若者はお姫様を深く愛していたので、「はい、約束します」と答えました。

    二人は結婚し、しばらくの間、とても幸せに暮らしました。ところが、ある日突然、お姫様が重い病気にかかり、亡くなってしまったのです。
    王様との約束は守らなければなりません。若者は悲しみにくれながらも、お姫様の亡骸と一緒に、暗くて冷たいお墓の中に閉じ込められてしまいました。お墓の中には、少しのパンと水、そして一本のろうそくだけが置かれました。

    真っ暗なお墓の中で、若者が悲しんでいると、どこからか一匹のヘビがにょろにょろとやってきました。若者はびっくりして、とっさに持っていた短剣でヘビを切りつけてしまいました。
    すると、また別のヘビが現れました。そのヘビは、口に緑色の小さな葉っぱを三枚くわえています。そして、死んでしまった仲間のヘビの傷の上に、その葉っぱを一枚ずつ置きました。すると、どうでしょう!死んでいたヘビがぴくぴくと動き出し、すっかり元気になって、二匹のヘビは一緒に出て行ってしまいました。

    若者は目を丸くしました。「すごい葉っぱだ!もしかしたら…」
    若者は急いで残っていた二枚の葉っぱを拾い上げると、亡くなったお姫様の冷たい唇と両まぶたの上に、そっと置きました。
    すると、奇跡が起こりました!お姫様の頬にほんのりと色が戻り、ゆっくりと目を開け、深呼吸をしたのです。お姫様が生き返ったのです!
    二人は大喜びで、お墓の扉を叩いて助けを求めました。外にいた人々も、お姫様が生き返ったことを知って、大騒ぎになりました。

    王様の国へ船で帰る途中、生き返ったお姫様の心に変化が起きました。なぜか、若者のことよりも、船を操るたくましい船長さんのことが好きになってしまったのです。
    そして、お姫様と船長は、恐ろしい計画を立てました。若者が甲板で眠っている間に、海に突き落としてしまおう、というのです。

    しかし、若者にはとても忠実な家来がいました。家来は二人の悪だくみをこっそり聞いていました。若者が海に落とされると、家来はすぐに小さなボートを降ろし、荒波の中から若者を救い上げました。
    幸いなことに、若者はあの不思議なヘビの葉っぱをまだ一枚持っていました。若者はその葉っぱを使って元気を取り戻すと、家来と一緒に小さなボートで必死に岸を目指しました。

    二人はお姫様たちの大きな船よりも先に王様の国にたどり着き、すぐにお城へ向かいました。若者は王様に、船の上で起こったこと、お姫様と船長の裏切りをすべて話しました。
    王様は話を聞いて大変驚き、そして怒りました。王様は若者と家来を部屋に隠れさせました。

    やがて、お姫様と船長が何食わぬ顔で王様の前に現れました。「お父様、残念なことに、あなたの婿さんは海で事故に遭い、亡くなってしまいました…」とお姫様は悲しそうなふりをして言いました。
    すると王様は言いました。「そうか。だが、真実を知る者がここにいるぞ。」
    王様が合図をすると、隠れていた若者と忠実な家来が現れました。お姫様と船長は、顔が真っ青になり、言葉も出ませんでした。

    悪いことをしたお姫様と船長は、罰として穴の開いた船に乗せられ、大海原へと流されてしまいました。
    王様は、正直で勇気のある若者にとても感謝し、彼を本当の息子のように大切にしました。若者はその後も、その勇気と思いやりで、たくさんの人々を助けながら暮らしたということです。

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