むかしむかし、あるところに、とっても怠け者な女の子がいました。特にお母さんから「糸を紡ぎなさい」と言われるのが、もう、だーいっきらい！

ある日、お母さんはとうとう我慢できなくなって、女の子を軽く叩いてしまいました。女の子がわーんと泣き出すと、ちょうどお城の女王様が馬車で通りかかりました。
「おや、どうして娘さんを叩いているのですか？」と女王様。
お母さんは恥ずかしくて、とっさに嘘をつきました。「いえいえ、うちの娘は糸紡ぎが大好きで、一日中紡いでばかりいるものですから、少し休ませようとしたのですが、どうしてもやめないものですから…」
「まあ、それは素晴らしい！」女王様は感心しました。「私は糸を紡ぐのが上手な人が大好きなのです。もしよろしければ、お城へ連れて行って、たくさんの亜麻を紡がせてあげたいのですが。」
お母さんは大喜び。女の子は内心「ええーっ！」と思いましたが、女王様の命令には逆らえません。

お城に着くと、女王様は女の子を三つの部屋へ案内しました。どの部屋も、天井まで亜麻がぎっしり！
「この亜麻を全部紡いでくれたら、私の息子、王子と結婚させてあげましょう。あなたは貧しくても、働き者ならそれで十分ですわ。」
女の子は顔が真っ青。こんなにたくさんの亜麻、一生かかっても紡げそうにありません。一人部屋に残されると、とうとう泣き出してしまいました。

そのとき、コンコン、とドアを叩く音。入ってきたのは、奇妙な三人組のおばあさんたちでした。
一人目のおばあさんは、片足がとっても大きくて平べったい足をしていました。
二人目のおばあさんは、下唇がだらーんと垂れ下がっていました。
三人目のおばあさんは、親指がびっくりするほど太かったのです。

「お嬢さん、どうして泣いているんだい？」
女の子が事情を話すと、三人は言いました。
「もし、あんたの結婚式に私たちを招待してくれて、恥ずかしがらずに『いとこです』って紹介してくれて、同じテーブルでご馳走してくれるなら、この亜麻、ぜーんぶ紡いであげるよ！」
「本当ですか！もちろんです、喜んで！」女の子は飛び上がって喜びました。

さあ、三人のおばあさんの仕事っぷりは見事なものでした。
一人目のおばあさんは大きな足で糸車の踏み板をカタカタカタ！
二人目のおばあさんは垂れた唇で糸をぺろぺろ湿らせてスルスルスル！
三人目のおばあさんは太い親指で糸をくるくるくる！
あっという間に、最初の部屋の亜麻が美しい糸になり、次の部屋、その次の部屋も、朝になる頃にはすっかり空っぽ。山のような見事な糸ができていました。

女王様は約束通り、王子様と女の子の結婚式を盛大に行いました。
女の子は約束を忘れず、三人の「いとこ」のおばあさんたちを招待しました。
王子様は、花嫁の隣に座った奇妙な三人を見て尋ねました。
「花嫁さん、あなたのいとこさんたちは、ずいぶん変わったお姿ですね。どうしてそんなに足が大きいのですか？」
「はい、それは糸車の踏み板をたくさん踏んだからでございます。」と一人目のおばあさん。
「では、どうしてそんなに唇が垂れているのですか？」
「はい、それは糸をいつも湿らせていたからでございます。」と二人目のおばあさん。
「そして、どうしてそんなに親指が太いのですか？」
「はい、それは糸をいつもねじっていたからでございます。」と三人目のおばあさん。

それを聞いた王子様は、びっくりして言いました。
「なんと！糸紡ぎとはそんなに体に悪い仕事だったのか！私の美しい花嫁には、もう二度と糸車に触らせるわけにはいかない！」

それを聞いた女の子は、心の中で「やったー！」と叫びました。
こうして、怠け者だった女の子は、大嫌いな糸紡ぎをもうしなくてもよくなり、王子様といつまでも幸せに暮らしましたとさ。

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