• 白い花嫁と黒い花嫁

    グリム童話
    あるところに、お母さんと二人の娘が住んでいました。一人のお母さんの本当の娘は、ちょっぴりわがままで、もう一人の娘は、とっても心が優しい女の子でした。でも、お母さんは自分の本当の娘ばかり可愛がって、優しい娘にはいつも冷たくしていました。

    ある日、遠い国から王子様が、この優しい娘をお嫁さんにもらいにやってくることになりました。お母さんはそれが気に入りません。「私の可愛い娘こそ、王子様のお嫁さんにふさわしいわ!」と考えました。

    さあ、出発の日です。お母さんは優しい娘にみすぼらしい灰色の服を着せ、自分の娘にはキラキラした綺麗なドレスを着せました。そして、優しい娘には年取ったのろまな馬を、自分の娘には元気で立派な馬を用意しました。

    長い旅の途中、優しい娘が喉が渇いて「お姉さん、少しお水をくださいな」と頼んでも、わがままな娘は「自分で川から汲んできなさいよ!私はあなたのお世話係じゃないわ!」と意地悪を言います。優しい娘が川で水を飲もうとかがむと、わがままな娘とお母さんは、わざと娘を突き飛ばして、びしょ濡れにしてしまいました。おまけに、優しい娘が大切にしていた、お母さんの形見のハンカチも川に流されてしまいました。

    とうとうお城に着くと、お母さんは王子様に言いました。「こちらが、あなたのお嫁さんになる私の娘でございます。隣にいるのは、ただのお手伝いの娘ですわ。」王子様は、わがままな娘のあまりのわがままっぷりと、お手伝いの娘の悲しそうな顔を見て、少し不思議に思いました。

    優しい娘は、お城ではガチョウの世話係として働くことになりました。毎日、ガチョウを連れて野原へ行くとき、彼女は小さな声で歌いました。
    「ああ、もしもお母様が生きていたら。私のこの悲しみを知ってくださるかしら。」
    その歌声はとても美しく、野原のそばを通りかかった王子様の耳にも届きました。

    一方、わがままな娘は「黒い花嫁」と呼ばれるようになりました。なぜなら、彼女の心は真っ黒で、いつも不機嫌で、誰にでも意地悪だったからです。優しい娘は、汚れた服を着ていても、その心の美しさから「白い花嫁」と密かに呼ばれるようになりました。

    王子様は、ガチョウ番の娘の優しい歌声と、その清らかな瞳が忘れられません。ある日、王子様はこっそりガチョウ番の娘の後をつけました。すると、娘が泉のほとりで顔を洗うと、不思議なことに、その姿がみるみるうちに輝くように美しくなり、まるで本物のお姫様のようでした。王子様は、これが本当の花嫁だと気づきました。

    王子様は王様に全てを話し、意地悪なお母さんとわがままな娘を呼び出しました。そして尋ねました。「人をだまし、嘘をついて、本当のお姫様を苦しめた者には、どんな罰がふさわしいだろうか?」
    お母さんは、それが自分のことだとは夢にも思わず、言いました。「そのような悪い者は、裸にして樽に入れ、釘をたくさん打ち付けて、馬に引かせて町中を引き回すべきですわ!」

    「それがお前たちの受ける罰だ!」と王子様が言うと、お母さんとわがままな娘は顔が真っ青になりました。二人はその言葉通りの罰を受け、国から追い出されてしまいました。

    そして、心の優しい「白い花嫁」は、王子様と結婚し、お城のみんなから愛され、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

    1533 閲覧数