• 六人の家来

    グリム童話
    これは、ある国の王子さまと、六人のふしぎな家来たちのお話だよ。

    その国には、それはそれは美しいお姫さまがいました。でも、このお姫さま、結婚相手にものすごーく難しい問題を出すので有名だったんだ。たくさんの王子や騎士が挑戦したけど、誰も成功しなかった。

    そこに、ひとりの若い王子さまがやってきました。「僕がお姫さまの出す問題に挑戦するぞ!」王子さまは勇気いっぱいです。

    旅の途中で、王子さまは面白い人たちに出会いました。

    一人目は、お腹が風船みたいに大きな男の人。「こんにちは!僕はね、世界中のパンだってぺろりと食べられるんだ!」と、にっこり。王子さまは「すごい!僕の家来になってくれないか?」と頼みました。男は喜んで仲間になりました。

    二人目は、ノッポで首の長い男の人。「やあ!僕はね、どんなに遠くのものでも、すぐそこにあるみたいに見えるんだ」と、ウィンク。王子さまはこの人も家来にしました。

    三人目は、大きな耳をした男の人。「ねえねえ、僕は草の葉っぱが伸びる音だって聞こえるんだよ」と、耳をぴくぴく。もちろん、この人も仲間入り。

    四人目は、足が棒のように細くて長い男の人。「ひとっ走りすれば、風より速いよ!」と、自信満々。王子さまは頼もしく思いました。

    五人目は、いつも何かを飲んでいる男の人。「海の水だって、ごくごく飲み干せるさ!」と、豪快に笑いました。彼も家来になりました。

    六人目は、いつも涼しい顔をしている男の人。「どんなに暑い場所でも、僕がいれば涼しくなるよ。逆に、どんな寒い場所でも、僕がいれば暖炉みたいにポカポカさ」と言いました。彼も仲間になりました。

    さて、お城に着くと、お姫さまは言いました。「最初の問題よ。広い広い海の底に、私の大切な指輪が沈んでしまったの。取ってきてちょうだい」

    王子さまは困りましたが、首の長い男が「あ、見えた!あそこだ!」と指さしました。次に、足の速い男が「任せて!」と海に向かって走り出しました。でも、指輪は海の底。すると、水を飲む男が「僕に任せて!」と、海の水をゴクゴクゴク!あっという間に海水が減って、足の速い男が指輪を拾って戻ってきました。

    お姫さまはびっくり。「じゃあ、次の問題!この山みたいに積まれたパンと、お城の地下室いっぱいのワインを、ぜーんぶたいらげてごらんなさい!」

    すると、お腹の大きな男が「お任せを!」とパンをむしゃむしゃ。水を飲む男(ワインも得意でした!)がワインをごくごく。あっという間に空っぽです。

    お姫さまは悔しそう。「最後の問題よ!私と一緒に、メラメラ燃える火の部屋で三日三晩過ごすのよ!」

    王子さまは心配しましたが、涼しい顔の男がこっそり王子さまのそばにいて、部屋をちょうどいい温度にしてくれました。王子さまは汗一つかかずに三日三晩過ごしました。

    こうして、王子さまは六人の家来たちのおかげで、難しい問題をぜんぶクリア!お姫さまと結婚することができました。六人の家来たちも、たくさんのご褒美をもらって大喜び。お姫さまも、王子さまの優しさと家来たちの活躍に心を打たれて、だんだん素直で優しいお姫さまになったんだって。

    めでたし、めでたし。

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