美しいカトリーネリェとピフ・パフ・ポルトリー
グリム童話
あるところに、カトリンライエという、とってもかしこい料理番の女の子がいました。彼女は、あるご主人様のもとで働いていました。
ある日、ご主人様が言いました。「カトリンライエ、今夜はピフパフ・ポルテリルさんというお客さんが来るから、とびきりおいしい鶏の丸焼きを二羽、用意しておくれ。」
「はい、かしこまりました!」カトリンライエはさっそく鶏をオーブンに入れ、じっくりと焼き始めました。
じゅうじゅう、ぱちぱち。キッチンには、それはそれは香ばしい匂いが広がります。
鶏はこんがりとキツネ色に焼けて、見ているだけでお腹が鳴りそうです。
カトリンライエは、焼きあがった鶏を見て、ごくりとつばを飲み込みました。
「あら、ちょっと味見してみようかしら。塩加減は大丈夫かしら?」
そう言って、ほんのちょっぴり、鶏の皮をちぎってパクリ。
「んー!なんておいしいんでしょう!」
もう一口、もう一口と味見をしているうちに、カトリンライエは、なんと鶏をまるまる一羽ぺろりと食べてしまったのです!
「あら大変!どうしましょう!ご主人様に叱られちゃうわ!」
カトリンライエは青くなりましたが、すぐにいいことを思いつきました。
残りの一羽を急いでオーブンから取り出し、お客さんが来るまで隠しておくことにしました。
そこへ、ご主人様がやってきました。
「カトリンライエ、お客さんはまだかね?鶏はもう焼けたかい?」
「はい、ご主人様。もう一羽はちょうどよく焼けております。ピフパフ・ポルテリルさんがいらしたら、すぐにお出ししますわ。」
やがて、お客さんのピフパフ・ポルテリルさんがやってきました。ご主人様は客間へ案内します。
そのすきに、カトリンライエはこっそりご主人様のところへ行きました。
「ご主人様、大変です!あのピフパフ・ポルテリルさんが、鶏を盗もうとしていますわ!私が目を離したすきに、一羽持っていこうとしていましたのよ!」
ご主人様はびっくり!「なんだと!けしからんやつだ!」と、戸棚から一番大きな肉切り包丁を取り出しました。「よし、見ていろ!」
カトリンライエは、今度は急いでピフパフ・ポルテリルさんのところへ行きました。
「ピフパフ・ポルテリルさん、大変です!早く逃げてください!うちのご主人様が、あなたの耳を切り落とそうと、大きな包丁を研いでいますわ!きっとあなたが鶏を盗んだと思っているのよ!」
ピフパフ・ポルテリルさんは真っ青!「ひえええ!そんなつもりじゃなかったのに!」と、一目散に家から逃げ出しました。
ちょうどその時、ご主人様が包丁を持って客間へやってきました。ピフパフ・ポルテリルさんが慌てて逃げるのを見て、「こら待て!鶏を返せ!」と、包丁を振り上げながら追いかけました。もちろん、ピフパフ・ポルテリルさんは鶏なんて持っていません。
二人ともいなくなると、カトリンライエはにっこり。
「ふう、やれやれ。これでゆっくり二羽目の鶏もいただけるわ。」
カトリンライエは、隠しておいたもう一羽の鶏も、おいしくぺろりとたいらげましたとさ。
まったく、かしこいカトリンライエでした。
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