これは、ちょっと変わった三姉妹のお話です。あるところに、お母さんと三人の娘が暮らしていました。

一番上のお姉さんは、目が一つしかないので「一つ目ちゃん」。真ん中の娘は、私たちと同じように目が二つなので「二つ目ちゃん」。そして一番下の妹は、なんと目が三つもあるので「三つ目ちゃん」と呼ばれていました。

お母さんと一つ目ちゃん、三つ目ちゃんは、普通の二つ目ちゃんがなんだか気に入らなくて、いつも意地悪ばかりしていました。「あんたは私たちと違うんだから！」と言って、二つ目ちゃんには残り物しかあげなかったり、ボロボロの服を着せたりするのです。

ある日、二つ目ちゃんがヤギの世話をしながら、お腹が空いて泣いていると、不思議なおばあさんが現れました。「どうして泣いているんだい？」と聞かれたので、二つ目ちゃんはわけを話しました。
するとおばあさんは、「この小さなヤギにこう言うんだよ。『ヤギさん、ヤギさん、テーブルだして、おいしいごはんを、さあどうぞ！』ってね。そうすれば、素敵な食事ができるから。でも、食べ終わったら必ず『ヤギさん、ヤギさん、テーブルしまって』と言うのを忘れちゃだめだよ」と教えてくれました。

二つ目ちゃんが言われた通りにヤギにお願いすると、あら不思議！ヤギの前には小さなテーブルが現れて、ほかほかのおいしい料理がたくさん並びました。二つ目ちゃんは、お腹いっぱい食べることができて、とても幸せでした。食べ終わると、「ヤギさん、ヤギさん、テーブルしまって」と言って、テーブルはきれいに消えました。

家に帰っても、お母さんたちが出すごはんがちょっぴりでも、二つ目ちゃんは平気でした。だって、ヤギさんがおいしいごはんをくれるからです。

でも、一つ目ちゃんと三つ目ちゃんは、「二つ目ったら、最近なんだか嬉しそうね。それに、ごはんもあまり欲しがらないわ。何か隠してるんじゃない？」と怪しみ始めました。

次の日、一つ目ちゃんが「私もヤギの世話を手伝うわ」と言って、二つ目ちゃんと一緒についてきました。二つ目ちゃんは（どうしよう、呪文を言えないわ）と困りましたが、一つ目ちゃんが疲れて木陰でウトウトし始めたので、こっそりヤギにお願いしてごはんを食べました。一つ目ちゃんは、一つの目しかないので、すぐにぐっすり眠ってしまったのです。

その次の日は、三つ目ちゃんがついてきました。二つ目ちゃんはまた困りましたが、三つ目ちゃんも木陰で「眠いわあ」と言って目を閉じました。二つ目ちゃんは（三つ目ちゃんなら、二つの目を閉じたらもう見えないはず）と思って、安心してヤギにごはんを出してもらいました。
ところが、三つ目ちゃんは二つの目を閉じて寝たふり。でも、こっそり三つ目の目を開けて、ぜーんぶ見ていたのです！

家に帰ると、三つ目ちゃんはお母さんに「お母さん、大変！二つ目ちゃんはヤギに呪文を唱えて、ごちそうを食べてるのよ！」と告げ口しました。
それを聞いたお母さんはカンカンに怒って、とうとうヤギさんを…ああ、かわいそうに…いなくなってしまいました。そして、二つ目ちゃんに「これを庭に埋めておきなさい」とヤギさんの大切なものを渡しました。

二つ目ちゃんは悲しくて泣きながら、言われた通りにそれを庭の隅に埋めました。
すると次の朝、そこからキラキラ光る銀の葉っぱと、金のリンゴがなる不思議な木が生えてきたのです！それはそれは見事な木で、誰にも手に入れることはできませんでした。

お母さんが「そのリンゴを取りなさい！」と一つ目ちゃんに言いましたが、一つ目ちゃんが手を伸ばすと、枝はひょいと上に逃げてしまいます。三つ目ちゃんが挑戦しても同じこと。
「もういいわ！」お母さんは怒ってしまいました。

そんなある日、立派な騎士が馬に乗って通りかかりました。騎士はその美しい木を見て、「素晴らしい木だ！この枝を一本折ってくれたお嬢さんと結婚しよう！」と言いました。
一つ目ちゃんと三つ目ちゃんは大喜びで挑戦しましたが、やっぱり枝はひょいと逃げてしまいます。

騎士が「他には誰もいないのかね？」と聞くと、お母さんたちは「みすぼらしい二つ目なんて娘がいますが、あの子には無理ですよ」と言いました。
でも騎士は「その子にもやらせてみなさい」と言います。

二つ目ちゃんがそっと木に近づいて手を伸ばすと、不思議なことに、金のリンゴがついた枝がすーっと彼女の方へとしなだれかかってきたのです。二つ目ちゃんは簡単に枝を折って、騎士に渡しました。

騎士は「君こそ私の花嫁だ！」と大喜び。二つ目ちゃんを自分のお城へ連れて行きました。二つ目ちゃんは騎士と結婚して、とても幸せに暮らしました。あの不思議な金のリンゴの木も、二つ目ちゃんと一緒にお城の庭へ移されて、ますます美しく輝いたそうです。

一方、一つ目ちゃんと三つ目ちゃんは、二つ目ちゃんがいなくなってからというもの、どんどん貧しくなっていきました。自分たちがした意地悪を後悔しましたが、もう遅いと思っていました。
でもある日、二つ目ちゃんが二人のことを知り、お城に呼び寄せました。心優しい二つ目ちゃんは、昔の意地悪なんてすっかり許して、お姉さんたちと一緒に仲良く暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。

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