• キツネと馬

    グリム童話
    あるところに、一頭のお馬さんがいました。お馬さんはもう年をとって、昔のように早く走ったり、重い荷物を運んだりできなくなってしまいました。

    ある日、ご主人様は言いました。「お前はもう役に立たないから、出ていきなさい。もしライオンを一頭捕まえてきたら、またうちで飼ってやろう。」

    お馬さんはしょんぼりして、とぼとぼと森へ入っていきました。「ライオンなんて、どうやって捕まえればいいんだろう?」悲しくてたまりません。

    森の中で、賢いキツネさんに出会いました。キツネさんは尋ねました。「どうしたんだい、そんなにしょんぼりして?」

    お馬さんはわけを話しました。するとキツネさんはにっこり笑って言いました。「心配いらないよ。僕にいい考えがある。君は地面に横になって、死んだふりをするんだ。ぴくりとも動いちゃだめだよ。」

    お馬さんはキツネさんの言う通りにしました。キツネさんはライオンのところへ走っていき、言いました。「ライオンさん、大変だ!あそこに大きくて立派な馬が死んでいるよ。ごちそうじゃないか!」

    ライオンは喜んで、キツネさんと一緒にお馬さんのところへやってきました。キツネさんは言いました。「ここで食べるのは落ち着かないだろう?巣まで運んだらどうだい?僕が手伝うよ。この馬のしっぽに君の足をしっかり結びつければ、ゆっくり安全に巣まで運べるよ。」

    食いしん坊のライオンは、キツネさんの言う通りに、自分の足を馬のしっぽにきつく結びつけてもらいました。

    キツネさんが「よし!」と合図すると、お馬さんは、うんと力を入れて立ち上がり、ライオンを引きずってご主人様のところへ走りました。ライオンはびっくりして吠えましたが、もう遅い!

    ご主人様はびっくり仰天!「本当にお前がライオンを捕まえてくるなんて!」

    ご主人様は約束通り、お馬さんをまたおうちに入れてくれました。お馬さんはそれからずっと、大切にされて、美味しい草をたくさんもらって、幸せに暮らしましたとさ。

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