賢い四人の兄弟
グリム童話
さあ、始まるよ!四人のとっても賢い兄弟の、わくわくするお話だ。
あるところに、貧しいけれど優しいお父さんが、四人の息子と暮らしていました。息子たちが大きくなったある日、お父さんは言いました。「みんな、そろそろ自分の力で生きていく時だ。それぞれ得意なことを見つけて、立派になって帰っておいで。」
四人の兄弟は元気よく「はい、お父さん!」と答えて、旅に出ました。
一番上のお兄さんは、すばしっこい泥棒の名人になりました。でも、悪いことをするためじゃありません。鳥が卵を温めている巣から、鳥に気づかれずにそーっと卵を一つだけ盗めるくらい、手先が器用になったのです。
二番目のお兄さんは、星空博士になりました。望遠鏡なんてなくても、空のずーっと遠くの星や、地面の小さな虫の動きまで、何でもはっきり見えるようになりました。
三番目のお兄さんは、狩りの名人になりました。百メートル先の木の枝に止まっているハエの、右の目と左の目の間を正確に射抜けるほどの腕前です。
そして四番目の弟は、仕立て屋さんの名人になりました。どんなにバラバラに壊れたものでも、まるで新品みたいにきれいに縫い合わせることができるのです。
何年かして、四人はお父さんの元へ帰ってきました。お父さんは大喜び。
「どれ、お前たちの腕前を見せてごらん。」
まず、一番上のお兄さん。庭の木の上に鳥の巣がありました。「あそこの巣から、卵を一つ取ってきてごらん。鳥を起こさずにね。」お兄さんは、風のように木に登り、鳥がうとうとしている間に、そーっと卵を一つ取ってきました。鳥は全然気づきません!
次にお父さんは二番目のお兄さんに言いました。「あの木の枝に、卵がいくつ見えるかね?」星空博士のお兄さんは空を見上げるふりをして、実は遠くの枝をじっと見て言いました。「五つありますよ、お父さん。」
するとお父さんは三番目のお兄さんに、「よし、その五つの卵を、一発の矢で全部撃ち抜いてみろ!」と言いました。狩りの名人は弓を構え、ヒュン!と矢を放つと、見事、五つの卵の真ん中をきれいに射抜きました。卵は割れてしまいました。
さあ、ここで四番目の弟の出番です。「その割れた卵を元通りにしてごらん。」弟は針と糸を取り出すと、あっという間に、割れた卵のかけらを一つ一つ丁寧に縫い合わせ、まるで割れる前みたいに元通りにしてしまいました!
お父さんは感心して言いました。「みんな、素晴らしい腕前だ!」
ちょうどその頃、国のお姫様が、恐ろしい竜にさらわれてしまいました。王様は国中に言いました。「お姫様を助け出した者には、お姫様と結婚させ、国の半分をやろう!」
四人の兄弟は顔を見合わせました。「よし、僕たちで助けに行こう!」
まず、星空博士のお兄さんが遠くを見つめて言いました。「見えた!お姫様は、海の向こうの、高い岩山の上にいる竜の巣に閉じ込められている!」
四人は急いで船を用意して、岩山へ向かいました。
岩山に着くと、一番上の泥棒名人が言いました。「僕が静かに入って、お姫様を連れ出してくるよ。」竜が大きないびきをかいて寝ている間に、お兄さんはそーっと忍び込み、お姫様を抱きかかえて出てきました。
みんなで船に乗り、急いで逃げ出しました。しかし、竜が目を覚ましてしまいました!「ガオー!」竜は怒って、ものすごい速さで追いかけてきます。
船が追いつかれそうになったその時、狩りの名人が弓を構えました。「今だ!」ヒュン!矢はまっすぐ竜の心臓に命中!
やったー!と思いきや、大きな竜が倒れる時、ドッシーン!と船の上に落ちてきて、船はバラバラに壊れてしまいました。
みんな海に投げ出されて、さあ大変!
でも大丈夫。仕立て屋さんの弟が、すぐに針と糸を取り出し、あっという間に船の破片を縫い合わせ、元通りの立派な船にしてしまいました。
こうして、四人の兄弟は無事にお姫様を助けて、王様の元へ帰りました。
王様は大喜び。でも、困ってしまいました。「うーむ、みんな素晴らしい働きだ。誰に褒美をあげたらよいかのう…」
四人の兄弟は言いました。「僕たちは、みんなで力を合わせたから助けられたんです。」
王様はにっこり笑って言いました。「そうか、それなら、国を四つに分けて、それぞれに治めてもらうことにしよう。そして、みんなでお姫様を守っておくれ。」
四人の賢い兄弟は、それぞれ国の立派な主となり、お姫様と一緒に、いつまでも仲良く幸せに暮らしたということです。めでたし、めでたし。
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