• 三人の職人

    グリム童話
    むかしむかし、あるところに、三人の若い職人さんがいました。長いあいだ一緒に修行して、いよいよ旅立ちの日がやってきました。

    「さあ、どこへ行こうか?」一人が言うと、みんなワクワク顔です。
    「僕の力を見せてあげるよ!」と、一番目の職人さんが言いました。「僕はね、欲しいと思ったものは何でも手に入れられるんだ!」
    そう言うと、彼は目を閉じて、「おいしいパンとチーズ、それから冷たい飲み物が欲しいなあ!」と願いました。すると、あら不思議!目の前にはほかほかのパンととろけるチーズ、そしてキラキラ光る飲み物が現れたのです。
    「わーい、すごい!」みんなで大喜びで食べました。

    「次は僕の番だ!」と、二番目の職人さんが言いました。「僕はね、どんなに遠くのものでも、狙ったものは百発百中さ!」
    彼は弓矢を取り出すと、遠くの木の枝にとまっている小鳥の、そのまた先の小さな葉っぱを指さし、「あの葉っぱの真ん中を射抜いてみせるよ!」と言いました。ヒュッ!と矢が飛んでいくと、パシッ!見事に葉っぱの真ん中に命中しました。
    「お見事!」みんな拍手喝采です。

    「じゃあ、最後は僕だね」と、三番目の職人さんが言いました。「僕はね、どんなに壊れたものでも、元通りに直せるんだ!」
    ちょうどその時、道のそばで車輪が壊れて困っているおじいさんがいました。三番目の職人さんは、「お任せください!」と言うと、道具を取り出し、トントン、カンカン。あっという間に壊れた車輪を元通りに直してしまいました。
    「ありがとう、ありがとう!」おじいさんは何度も頭を下げました。

    三人は旅を続け、ある立派な町に着きました。でも、町の人々はみんな悲しそうな顔をしています。
    「どうしたのですか?」と尋ねると、宿屋の主人が教えてくれました。
    「この町には、恐ろしい竜がいてね。毎年、若い娘を一人さしださないといけないんだ。そして今年は、王様の一人娘のお姫様の番なんだよ…」
    それを聞いた三人は顔を見合わせました。「よし、僕たちがお姫様を助けよう!」

    一番目の職人さんは、「竜のいるところまで、あっという間に着く船が欲しい!」と願いました。すると、目の前に風よりも速く進む立派な船が現れました。
    三人は船に乗り込み、竜の住む島へ向かいました。

    島に着くと、大きな洞窟から、火を吹く巨大な竜が現れました!お姫様が震えています。
    「今だ!」二番目の職人さんが弓を構え、竜の弱点である小さな目を狙って、ヒュッ!矢は竜の目にまっすぐ吸い込まれ、竜は大きなうなり声をあげて倒れました。
    やったー!と喜んだのもつかの間、竜が倒れるときの衝撃で、船が少し壊れてしまいました。
    「大丈夫!」三番目の職人さんがすぐに道具を取り出し、トントン、カンカン。船は元通りになりました。

    三人はお姫様を連れて、王様の待つお城へ帰りました。王様は大喜びで、
    「ありがとう、若者たちよ!お前たちのおかげでお姫様は助かった。褒美として、この国とお姫様を…いや、誰に与えたらよいかのう?」
    三人は、「僕のおかげだ!」「いや、僕が射止めた!」「船を直したのは僕だ!」と言い合いになりました。

    困った王様は言いました。「よし、では試練を与えよう。この小さな指輪を通るほど薄くて美しい布を持ってきた者に、褒美をあげよう。」
    一番目の職人さんは、「そんなの簡単さ!」と願い、美しい布を手に入れました。
    二番目の職人さんは、遠くから細い糸を指輪に通そうとしましたが、うまくいきません。
    三番目の職人さんは、静かに座り、持っていた糸でスイスイと布を織り始めました。それはそれは細やかで、指輪を軽々と通り抜ける、虹のように美しい布でした。

    王様はうなりました。「うーむ、どちらも素晴らしい。では、もう一つ。黄金でできた、まるで生きているような小鳥を作ってきた者を選ぶことにしよう。」
    一番目の職人さんは、また願いの力でピカピカの黄金の小鳥を手に入れました。
    二番目の職人さんは、金の塊を矢で削って鳥の形にしようとしましたが、ただの傷だらけの塊になるだけです。
    三番目の職人さんは、金槌とノミを取り出し、コンコン、カリカリ。時間をかけて、羽の一枚一枚まで本物そっくりの、美しい黄金の小鳥を彫り上げました。

    王様は、三番目の職人さんの作った小鳥を手に取り、感心しました。
    「願いの力も、弓矢の腕も素晴らしい。しかし、自分の手で根気よく、こんなにも美しいものを作り上げる力は、本当に尊い。お前こそ、褒美にふさわしいかもしれん。」
    でも、王様は三人の力を全部見てきました。
    「いや、待てよ。一人の力だけでは竜は倒せなかったかもしれん。三人の力が合わさったからこそ、お姫様を救えたのだな。」

    それを聞いた三人も、お互いの顔を見ました。
    「そうだね、一人じゃできなかった。」
    「みんながいたからだ。」
    「うん、一緒だったからだね!」
    三人はにっこり笑い合いました。

    王様は言いました。「お前たち三人に、それぞれ望むだけの褒美をあげよう。そして、これからも三人で力を合わせ、人々のためにその素晴らしい技を使っておくれ。」
    三人の職人さんは、たくさんの褒美をもらい、その後もずっと仲良く一緒に旅を続け、その素晴らしい腕前でたくさんの人々を助けたということです。めでたし、めでたし。

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