• 二人の王の子

    グリム童話
    太陽がキラキラ輝く国に、元気いっぱいの王子さまがいました。そして、もうひとつ、ちょっぴり不思議な国には、美しいお姫さまが住んでいました。

    このお姫さまには、ちょっぴり変わった決まりごとがあったのです。「15歳になるまで、絶対に太陽の光を見てはいけません。もし見たら、怖い犬に食べられてしまうかもしれないからね」と、賢い魔法使いが言ったのです。だからお姫さまは、太陽の光が届かない、静かで暗いけれど、とてもきれいな地下のお部屋で暮らしていました。お部屋には、キラキラ光る宝石がたくさん飾られていて、寂しくないように、おしゃべりな小鳥も一緒でした。

    ある日、王子さまはお姫さまの噂を聞きました。「なんて美しいお姫さまなんだろう!ぜひ会ってみたいな」王子さまはすっかりお姫さまのことが気になってしまいました。王子さまは長い旅をして、とうとうお姫さまの隠れ家を見つけました。暗い部屋で初めて会った二人は、すぐに仲良くなりました。お姫さまは王子さまの優しさに、王子さまはお姫さまの美しさと明るい心に惹かれたのです。

    「また会いに来るよ」王子さまは言いました。「でも、この部屋に入るには特別な金の鍵がいるんだ。僕のお母さん、女王さまに頼んで、その鍵を持ってくるね」

    ところが、王子さまのお城には、意地悪な家来がいました。その家来は、王子さまがお姫さまと仲良くなるのが面白くありません。「よし、いたずらしてやろう」と、金の鍵をこっそり古くてさびた鍵とすり替えてしまったのです。

    王子さまは何も知らずに、さびた鍵を持ってお姫さまの元へ行きました。でも、カチャカチャやっても、ドアは開きません。「どうして?お姫さまは僕に会いたくないのかな…」王子さまはとても悲しくなって、自分の国へ帰ってしまいました。

    お姫さまも、王子さまが来なかった(と思った)ので、がっかりしました。「王子さまは、もう私のことなんて忘れてしまったんだわ…」そして、とうとう15歳になった日、お姫さまはたった一人で地下の部屋を出て、遠い町へ働きに出ました。もう犬の心配もいりませんでしたが、心はちょっぴり寂しかったのです。

    お姫さまは、あるお城の台所で、お料理のお手伝いをすることになりました。その頃、王子さまは、悲しみを乗り越えて、別のお姫さまと結婚することになっていました。

    結婚式の日、お城では大きなお祝いのパーティーが開かれました。台所で働いていたお姫さまは、王子さまのために特別なスープを作りました。そして、そのスープのお皿の底に、昔王子さまからもらった小さな星の飾りをそっと忍ばせたのです。

    王子さまがスープを飲み干すと、キラリと光る星の飾りが出てきました。「これは…!」王子さまはびっくり。そして、スープを持ってきたのが、あの時のお姫さまだと気づいたのです。「君だったのか!」二人は見つめ合いました。意地悪な家来のいたずらも全部わかり、王子さまは本当の花嫁がお姫さまだと宣言しました。

    こうして、王子さまとお姫さまは、たくさんの困難を乗り越えて、ついに結婚しました。二人はいつまでもいつまでも、太陽の光がいっぱい降り注ぐお城で、幸せに暮らしましたとさ。

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