二人の兄弟
グリム童話
みんな、聞いて!これから始まるのは、ちょっぴり不思議で、ちょっぴりドキドキする、二人の兄弟の物語だよ。
あるところに、お兄さんと弟さんが住んでいたんだ。お兄さんはお金持ちで、大きな家に住んでいたけど、ちょっぴり欲張りで、心が狭いところがあった。一方、弟さんは貧乏だったけど、とっても心優しい人だった。
ある日、弟さんはお腹がぺこぺこ。食べるものが何もなくて、困ってしまった。そこで、お兄さんの大きな家を訪ねて、「お兄さん、何か食べるものを少し分けてくれませんか?」とお願いした。
お兄さんは、しぶしぶ、ほんの小さなパンのかけらを弟さんに渡して言った。「これだけだぞ。これ以上はあげられないからな!」
弟さんは「ありがとう、お兄さん」と言って、その小さなパンを持ってとぼとぼと森の中へ入っていった。
森の奥で、弟さんは小さな可愛い小鳥を見つけた。小鳥は弱々しく鳴いていて、なんだか元気がなさそう。
「どうしたんだい、小鳥さん?」弟さんが優しく声をかけると、小鳥は「お腹が空いて飛べないの…」と答えた。
弟さんは、自分もお腹が空いていたけれど、持っていたパンのかけらを小鳥に差し出した。「これをどうぞ。僕より君のほうが大変そうだ。」
小鳥は喜んでパンを食べると、元気を取り戻して言った。「ありがとう、優しい人!お礼に、これをあげましょう。」
そう言って、小鳥はキラキラ光る不思議な石を一つ、弟さんにくれたんだ。「この石を持っていると、毎日一つだけ、金の卵を産むニワトリが現れるわ。」
弟さんが家に帰って石を置くと、本当に次の朝、一羽のニワトリがやってきて、ぴかぴかの金の卵を一つ産んだ!弟さんは大喜び。毎日金の卵が手に入るから、もう貧乏じゃなくなった。美味しいものをたくさん食べて、新しい服も買って、小さな家も少し立派になった。
その噂は、欲張りなお兄さんの耳にも入った。お兄さんは弟さんの家へやってきて、金の卵を産むニワトリを見てびっくり!
「すごいじゃないか、弟よ!そのニワトリ、どうしたんだ?」
弟さんは正直に、森で小鳥に助けられたこと、お礼に不思議な石をもらったことを話した。
お兄さんは心の中で(しめしめ、あんな石ころよりも、このニワトリの方がずっといいぞ)と考えた。そして、弟さんにこう言ったんだ。
「なあ弟よ、そのニワトリ、わしに一日だけ貸してくれないか?お礼に、もっと大きなパンをたくさんあげよう。」
心優しい弟さんは、お兄さんの言うことを信じて、ニワトリを貸してあげた。
でも、お兄さんはニワトリを返す気なんてさらさらなかった。次の日、弟さんがニワトリを返してもらいに行くと、お兄さんはそっくりな普通のニワトリを渡して、「これが君のニワトリだよ」と嘘をついたんだ。
弟さんは悲しかったけど、お兄さんには逆らえなかった。
しょんぼりして森へ行くと、またあの小鳥が飛んできた。
「どうしたの?元気がないわね。」
弟さんが事情を話すと、小鳥は怒ったように羽をばたつかせた。
「なんて欲張りなお兄さんでしょう!よし、今度はこれをあげるわ。」
小鳥は、今度は一本の小さな木の棒をくれた。「この棒はね、『棒さん、お仕事!』って言うと、悪いことをした人をこらしめてくれるのよ。そして、『棒さん、おしまい!』って言うと止まるの。」
弟さんはその棒を持って、お兄さんの家へ向かった。
「お兄さん、本当のニワトリを返してください!」
お兄さんは「しつこいなあ!あれがお前のニワトリだと言っただろう!」と怒鳴った。
そこで弟さんは言った。「棒さん、お仕事!」
すると、木の棒はぴょーんと飛び出して、お兄さんのお尻や足をぺしぺし!と叩き始めた。
「痛い!痛い!なんだこれは!やめろー!」お兄さんは逃げ回ったけど、棒は追いかけて叩き続ける。
「わかった、わかった!金のニワトリを返すから、許してくれ!」
お兄さんがそう叫ぶと、弟さんは「棒さん、おしまい!」と言った。棒はぴたっと止まって、弟さんの手元に戻ってきた。
お兄さんは泣きながら金のニワトリを弟さんに返した。
弟さんはニワトリと棒を持って自分の家に帰った。それからというもの、弟さんは金の卵のおかげで幸せに暮らし、困っている人がいれば助けてあげる、優しいお金持ちになったんだって。
お兄さんはというと、ちょっぴり反省して、前よりは少しだけ人に親切になった…かもしれないね。
これでお話はおしまい。
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