フリーデルとカテルリーゼ
グリム童話
あるところに、フリデールという働き者のだんなさんと、カトリーヌという、ちょっぴりうっかりものの奥さんがいました。
ある日、フリデールは畑仕事に出かける前に、カトリーヌに言いました。「おーい、カトリーヌ。お昼までには戻るから、おいしいソーセージを焼いて、冷たいビールを用意しておいてくれよ。」
「ええ、わかったわ、あなた!」とカトリーヌは元気よく返事をしました。
カトリーヌはさっそくソーセージをフライパンで焼き始めました。ジュージューといい音がして、おいしそうな匂いがしてきました。
「あら、ビールがなかったわ!」カトリーヌは地下室へビールを取りに行きました。
ビールを樽からジョッキに注いでいると、ふとカトリーヌは思いました。「そうだわ、うちの犬が地下室に迷い込んだら大変!戸を閉めておかなくちゃ。」
でも、カトリーヌはうっかり、地下室の戸ではなく、台所の戸に鍵をかけてしまいました。
さて、台所に戻ると、ソーセージはこんがり焼けていました。
「フリデールが帰ってくるまで、ちょっと味見しましょう。」
一本食べると、とってもおいしい!「もう一本だけ…」そうしているうちに、あらあら、ぜーんぶ食べてしまいました。
「大変!フリデールに叱られちゃうわ!」カトリーヌは慌てて、新しいソーセージを戸棚から出そうとしましたが、戸棚の鍵が見つかりません。
そこへフリデールが帰ってきました。「ただいまー!ソーセージとビールはできたかい?」
カトリーヌはしょんぼりして言いました。「ごめんなさい、あなた。ソーセージ、私がぜんぶ食べちゃったの。それに、ビールを取りに行ったとき、台所の戸に鍵をかけちゃって、戸棚の鍵もどこかへ…」
フリデールは頭を抱えましたが、カトリーヌを叱っても仕方ありません。「まあ、いいさ。それより、畑から金貨を掘り当てたんだ!これを大切にしまっておこう。」
フリデールは金貨の入った袋をテーブルに置きました。
カトリーヌはピカピカの金貨を見て、「まあ、きれいな石ころ!ワンちゃんのおもちゃにしましょう。」と、金貨をいくつか犬小屋のそばに置いてしまいました。
しばらくして、フリデールが「さっきの金貨はどこだ?」と聞くと、カトリーヌは「あら、あそこの犬小屋のそばよ。きれいだから飾っておいたの。」
フリデールが見に行くと、金貨は一つもありません。どうやら、通りかかった泥棒が持っていってしまったようです。
「なんてことだ!」フリデールはがっくり。
また別の日、フリデールは言いました。「カトリーヌ、今日は干しリンゴに酢をかけて、おいしい酢漬けを作っておいてくれ。」
「わかったわ!」
カトリーヌは酢の瓶を持ってきましたが、どれが干しリンゴかわかりません。そこにあった小麦粉の袋を見て、「これかしら?」と、小麦粉の袋に酢をぜーんぶかけてしまいました。
帰ってきたフリデールは、酢まみれの小麦粉を見て、またまたため息をつきました。
ある日、二人は親戚の結婚式に行くことになりました。
フリデールは言いました。「カトリーヌ、家の戸締りをしっかりして、家をちゃんと守るんだよ。」
「ええ、任せて!」
カトリーヌは考えました。「そうだわ!このドアがいちばん大事なんだから、ドアを持っていけば安心ね!」
なんとカトリーヌは、家のドアを蝶番から外して、それを背負って出かけてしまいました。
途中でフリデールが追いついて、ドアを背負ったカトリーヌを見てびっくり仰天!
「カトリーヌ!何をしてるんだ!?」
「だって、あなたが家をちゃんと守れって言ったから、ドアを持ってきたのよ!」
フリデールはもう、あきれるしかありませんでした。
仕方なく、二人で重たいドアを運びながら森の中を進んでいると、日が暮れてきました。
「今夜はあの大きな木の上で休もう。」フリデールが言うと、二人はドアをなんとか木の上まで引き上げました。
真夜中ごろ、木の根元に泥棒たちがやってきて、盗んだ金貨を分け始めました。
木の上でドアを持っていたカトリーヌは、だんだん疲れてきました。手が滑って、ドアがどすーん!と下に落ちてしまいました。
泥棒たちはびっくり仰天!「うわー!化け物だー!」
カトリーヌはさらに、持っていたリンゴや梨を泥棒たちに投げつけました。
泥棒たちは金貨も何もかも放り出して、一目散に逃げていきました。
朝になり、フリデールとカトリーヌが木から下りてみると、そこにはたくさんの金貨が!
「やったあ!カトリーヌ、君のおかげで大金持ちだ!」フリデールは大喜び。
うっかりもののカトリーヌでしたが、思わぬことでフリデールを助けたのでした。
そして二人は、その金貨で、その後ずっと幸せに暮らしましたとさ。
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