二人の兄弟
アンデルセン童話
あるところに、二人の兄弟が住んでいました。一人はハンスといって、大きくて立派なおうちに住んでいるお金持ち。もう一人はアンデルといって、森のそばの小さな小屋に住んでいました。アンデルは貧乏でしたが、とても心優しい男の子でした。
ある寒い冬の日、アンデルは森で凍えている小さな小鳥を見つけました。「かわいそうに」アンデルは小鳥をそっと両手で包み、自分の小屋へ連れて帰って温めてあげました。元気になった小鳥は、お礼にキラキラ光る不思議な豆を一つくれました。「この豆を土に埋めてごらん。きっといいことがあるよ」そう言って、小鳥は空へ飛んでいきました。
アンデルが言われた通りに豆を埋めると、次の朝、びっくり!豆からは大きな木がにょきにょきと伸びていて、その枝にはおいしそうなパンや温かいスープ、甘いお菓子がたくさんなっていました。アンデルは大喜びで、毎日お腹いっぱい食べられるようになりました。
その噂を聞きつけたのが、兄さんのハンスです。「なんだって?アンデルの木には食べ物がなるだと?けしからん、わしの方が金持ちなのに!」ハンスはアンデルの小屋へ押しかけ、「おい、アンデル!その不思議な木をわしに売れ!金貨をたんまりやろう」と大きな声で言いました。
アンデルは困りましたが、ハンスがあまりにも欲しがるので、木を譲ることにしました。ハンスは木を自分の広い庭に植え替えさせ、大喜び。「これで毎日ごちそう食べ放題だ!」
ところが、ハンスが木からパンを取ろうとすると、パンはカチカチの石ころに変わってしまいました。スープを取ろうとすると、ただの泥水に。お菓子は苦い草のようになってしまいました。木は、欲張りで意地悪なハンスの庭では、おいしい実をつけてくれなかったのです。
「うわーん!どうしてなんだ!」ハンスは悔しがって泣きましたが、もう遅いのです。
一方、アンデルは木がなくなっても、また森で親切な行いを続けました。すると今度は、感謝した森の動物たちが、毎日少しずつ木の実やきのこをアンデルの小屋へ運んでくれるようになりました。アンデルは、豪華ではありませんでしたが、心優しい動物たちのおかげで、毎日温かい気持ちで暮らすことができました。
ハンスはというと、食べ物のならない木を眺めながら、ため息ばかり。やっぱり、欲張って人を困らせると、いいことはないんだね、と少しだけ反省したそうです。
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