• 太陽の物語

    アンデルセン童話
    空のいちばん高いところ、まあるくて、いつもにこにこしているおひさまがいました。おひさまは、毎朝、それはそれは早起きです。「さあ、今日もみんなを照らしに行くぞー!」と、大きなあくびをひとつして、ゆっくりと東の空からのぼりはじめます。

    まず、おひさまが「おはよう!」と声をかけるのは、まだ夢の中の小さな小鳥たち。おひさまのあったかい光が羽にふれると、小鳥たちは「ちちちっ!」と目を覚まし、元気いっぱいに歌いだします。それから、野原の小さなお花たちにもごあいさつ。「みんな、きれいに咲いてね!」おひさまの光を浴びて、お花たちは嬉しそうに色とりどりの顔をあげます。

    町へやってくると、おひさまは窓からそっと家の中をのぞきます。ある家では、風邪をひいてベッドで寝ている女の子がいました。「かわいそうに。でも、だいじょうぶだよ」おひさまは、いつもより優しい光を女の子の部屋に送りました。「ほら、あったかいでしょう? これで少しは元気になるかな?」女の子は、窓から差し込む光に気づいて、ほんの少しだけ微笑んだように見えました。おひさまも、なんだか嬉しくなりました。

    またある家では、絵描きさんが大きなキャンバスの前でうーんと首をひねっていました。「なかなかいい色が思いつかないなあ」おひさまは、絵描きさんのパレットをきらきらと照らしました。「見てごらん、世界はこんなにたくさんの色であふれているよ!」絵描きさんは、おひさまの光に照らされた自分の手や部屋の色を見て、ぱっと顔を輝かせました。「そうだ、この色を使ってみよう!」

    おひさまは、高い山の上も、広い広い海の上も、みんな同じように照らします。一生懸命お仕事をしている人たちには「がんばって!」とエールを送り、公園で元気に遊ぶ子どもたちには「もっともっと遊ぼう!」とキラキラした光を投げかけます。子どもたちの笑い声を聞くと、おひさまも楽しくなって、一緒に踊りだしたくなるのでした。

    おひさまは、嬉しいことも、ちょっぴり悲しいことも、全部見ています。でも、どんな時も、みんなを優しく見守り、暖かく包み込んでくれるのです。

    やがて夕方になると、おひさまは少しだけ眠たくなってきます。「ああ、今日も一日、楽しかったなあ」おひさまは、西の空をきれいなオレンジ色やピンク色に染めながら、ゆっくりゆっくりと山の向こうへ沈んでいきます。「みんな、また明日ね。おやすみなさい」

    そして、おひさまがいなくなった空には、今度は優しいお月さまと、キラキラ光るお星さまたちがやってくるのでした。でも、心配いりません。おひさまは、また次の朝、元気にみんなのところにやってきて、新しい一日を明るく照らしてくれるのですから。

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