ピーターとピーターの妻とピーターの小さな息子
アンデルセン童話
森のはずれに、小さくて可愛らしいおうちがありました。そこには、ペーターという名前のお父さんと、その奥さん、そして小さな息子のペーターちゃんが、仲良く暮らしていました。
おうちの中はいつもピカピカで、お庭にはきれいなお花が咲いていました。ペーターお父さんは毎日畑で一生懸命働き、奥さんは美味しいごはんを作ったり、おうちをきれいにしたりしていました。小さなペーターちゃんは、元気いっぱいで、お父さんのお手伝いをしたり、お母さんと一緒に歌を歌ったりするのが大好きでした。
暮らしは決して豊かではありませんでしたが、三人はいつもニコニコ笑顔で、家の中は笑い声でいっぱいでした。「ああ、今日も一日楽しかったね!」と、夜になると三人で星を見ながら話すのが日課でした。
ある晴れた日のことです。立派な馬に乗った王様が、お供を連れて森の近くを通りかかりました。王様は少し道に迷ってしまい、ちょうどペーターさんのおうちの煙突から出る煙を見つけました。
「おや、あそこに小さな家があるな。少し休ませてもらおうか。」
王様は馬から降りて、ペーターさんのおうちの戸をコンコンと叩きました。
「はーい!」と元気よく出てきたのは、小さなペーターちゃんでした。
奥からペーターお父さんと奥さんも出てきて、びっくり。目の前に立派な服を着た人がいたからです。
「旅の者です。少しお水をいただけませんか?」王様はそう言いました。
ペーターさん一家は、どうぞどうぞと王様を家の中に招き入れました。
王様は、質素だけれど温かい雰囲気のおうちと、ペーターさん一家の楽しそうな様子に、なんだか心が和みました。小さなペーターちゃんは、王様に興味津々で、お父さんが作った木のおもちゃを見せたり、お庭で捕まえたカエルのはなしをしたりしました。
王様は、ペーターちゃんが無邪気に話すのを聞きながら、思わず笑顔になりました。
「実は、わしはこの国の王なのじゃ。」
王様がそう言うと、ペーターさん夫婦はもっとびっくりして、慌てて頭を下げました。
「いやいや、そんなにかしこまらなくても良い。お前たちの仲睦まじい暮らしぶりを見て、わしはとても感心した。何か褒美をあげよう。金貨がたくさん欲しいか?それとも、もっと大きなお城のような家に住みたいか?」
すると、ペーターお父さんはにっこり笑って言いました。
「王様、お言葉は大変ありがたいのですが、私たちはこの小さなおうちと、今の暮らしで十分に幸せなのです。毎日家族みんなで笑って過ごせること、それが私たちにとって一番の宝物ですから。」
奥さんも頷き、小さなペーターちゃんも「うん!ここが一番好き!」と言いました。
王様は、ペーターさん一家の言葉を聞いて、心から感心しました。
「そうか、そうか。本当の幸せとは、お金や大きな家だけではないのだな。」
王様は、ペーターさん一家から大切なことを教わったような気がしました。
王様は、ペーターさん一家に心からお礼を言うと、お城へ帰っていきました。
ペーターさんと奥さんと小さなペーターちゃんは、その後もずっと、森のはずれの小さなおうちで、毎日ニコニコ、仲良く幸せに暮らしましたとさ。
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