• そぼ

    アンデルセン童話
    あるところに、とってもやさしいおばあちゃんがいました。
    お顔には、たくさんのしわがありました。でも、そのしわは、まるで素敵な地図みたい。おばあちゃんが生きてきた、楽しいことや、ちょっぴり悲しいことが、ぜんぶ描いてあるみたいでした。
    おばあちゃんの目は、いつもキラキラしていて、まるでお星さまみたいでした。その目で見つめられると、なんだか心がぽかぽか温かくなるのでした。髪の毛は、雪みたいに真っ白で、ふんわりと優しそうでした。

    おばあちゃんは、いつもニコニコしていました。そして、おばあちゃんがそばにいると、どんなことでも大丈夫だって思えるのでした。おばあちゃんは、お花が大好きでした。特に、きれいなバラの花が。お庭には、おばあちゃんが大切に育てたバラが、いつもいい香りをさせていました。

    でもある日、おばあちゃんは少し元気がなくなってしまいました。ベッドで静かに横になっていることが多くなりました。それでも、おばあちゃんの目は、やっぱり優しく光っていました。おばあちゃんの手を握ると、しわしわだけど、とても温かかったのです。

    そして、ある静かな夜、おばあちゃんは、そっと目を閉じて、眠るように遠いお空へ旅立っていきました。
    もう、おばあちゃんの優しい声を聞くことはできません。
    もう、おばあちゃんの温かい手に触れることもできません。
    みんな、とても悲しくなりました。涙がぽろぽろこぼれました。

    でもね、不思議なことに、おばあちゃんがいなくなっても、おばあちゃんの優しさは、まだそばにあるような気がするのです。
    お庭に咲いたバラの花を見ると、おばあちゃんの笑顔を思い出します。
    夜空に輝く一番星を見ると、「あれはおばあちゃんかな」って思うのです。
    おばあちゃんは、目には見えなくなってしまったけれど、きっと空の上から、私たちを優しく見守ってくれているのでしょう。
    そして、いつまでも私たちの心の中で、生き続けているのです。おばあちゃんが教えてくれた優しさや温かさは、ずっと消えない宝物だからです。

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