黄金の宝
アンデルセン童話
風がヒューヒューと歌う寒い夜、小さな家にペーターという男の子がいました。ペーターは、たいこを叩くのがとっても上手な男の子。でも、お家はちょっぴり貧乏で、いつもお腹をすかせていました。
ある晩、ペーターは夢を見ました。夢の中では、キラキラ光る金貨がいっぱいの宝箱を見つけたのです!「わあ、これがあれば、お腹いっぱいパンが食べられるぞ!」ペーターは嬉しくなりました。
次の日、ペーターが森を歩いていると、優しい目をしたおばあさんに出会いました。ペーターは夢の話をしました。「おばあさん、僕は金色の宝物を見つけたいんです!」
おばあさんはにっこり笑って言いました。「坊や、本当の宝物はね、遠くにあるんじゃない。君自身の中にあるんだよ。君のたいこの音、それが君の宝物さ。」
ペーターは最初、おばあさんの言葉の意味がよく分かりませんでした。「僕のたいこが宝物?」
でも、ペーターはたいこを叩くのが大好き。だから、たいこを肩にかけ、村から村へと旅に出ました。
ペーターがたいこをトントコトンと叩くと、あら不思議!みんなニコニコ笑顔になりました。悲しい顔をしていた人も、ペーターのたいこの音を聞くと、元気が出て踊りだすのです。
「坊やのたいこは素晴らしいね!」「ありがとう、元気が出たよ!」
人々はペーターに、おいしいパンや温かいスープをくれました。そして、ペーターのたいこを聞いて、みんな幸せそうな顔をしました。
ペーターは、たくさんの人の笑顔を見ることができて、とっても幸せでした。その時、ペーターはハッとしました。「そうか!おばあさんが言っていた金色の宝物って、これだったんだ!僕のたいこの音が、みんなを幸せにして、僕も幸せにしてくれる。これが僕の宝物なんだ!」
ペーターはもう、夢で見た金貨の宝箱を探すことはありませんでした。だって、ペーターは自分だけの、もっともっと素敵な「金色の宝物」を、もう見つけていたのですから。それは、彼のたいこの音と、みんなの笑顔でした。そしてペーターは、たいこを叩きながら、たくさんの人を笑顔にする旅を続けたのでした。
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