三人虎を成す
中国寓話
ねえ、みんな、聞いて!こんなお話があるんだよ。
むかしむかし、ある国に、パンさんという頭のいい家来がいました。
ある日、パンさんは王様に言いました。「王様、私は王子さまと一緒に、遠いお隣の国へしばらく行かなければなりません。」
王様は「そうか、気をつけて行ってくるのだぞ」と送り出すことにしました。
出発の前に、パンさんは心配そうな顔で王様に尋ねました。
「王様、もし一人の人が『大変だ!町なかの市場にトラが出たぞ!』と走ってきて言ったら、王様は信じますか?」
王様は笑って言いました。「まさか!市場にトラなんているわけないじゃないか。信じないよ。」
パンさんは続けます。「では、もし二人の人が同じように『市場にトラが!』と言ってきたらどうでしょう?」
王様は少し考えて、「うーん、二人も言うなら、もしかして…と少しは気になるかもしれないなあ」と答えました。
「それでは、もし三人の人が口をそろえて『本当に市場にトラがいたんです!』と一生懸命に言ったら?」
すると王様は、「それは大変だ!三人も言うのなら、きっと本当にトラが出たのだろう!すぐに確かめさせよう!」と真剣な顔で言いました。
パンさんは頷いて言いました。「王様、市場にトラがいないことは、本当はみんな知っています。でも、三人が同じことを言うと、まるで本当のことのように聞こえてしまうのです。私が遠い国へ行っている間、私のことを悪く言う人が一人、二人、そして三人以上現れるかもしれません。市場のトラの話のように、どうか、本当ではない噂を信じないでくださいね。」
王様は「わかった、パンさん。心配いらないよ。私はちゃんと自分で考えるから、そんな噂にだまされたりしないさ」と約束しました。
パンさんは安心して、王子さまと一緒に遠い国へ旅立ちました。
ところが、パンさんがいなくなると、やっぱり、彼のことをよく思わない人たちが、少しずつ悪い噂を流し始めました。「パンさんは悪いことを考えているらしいぞ」「王様の悪口を言っていたそうだ」などと。
最初は一人、そして二人、三人と同じような噂が王様の耳に入るようになりました。
そして数ヶ月後、パンさんが国へ帰ってきました。しかし、王様はすっかり噂を信じ込んでしまっていて、パンさんに会おうともしませんでした。あんなに約束したのに、王様はたくさんの人が言うことを本当だと思ってしまったのです。
パンさんはとても悲しい気持ちになりました。
ね、たくさんの人が同じことを言っていると、それが本当かどうか確かめなくても、つい信じてしまうことがあるんだね。だから、聞いたお話が本当かどうか、自分の頭でよーく考えるのが大切なんだよ。
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