• 履を買いて寸法を信ず

    中国寓話
    むかしむかし、というほど昔でもないかもしれませんが、あるところに、ちょっぴり変わった男の人がいました。

    その日、男の人は新しい靴を買おうと思いたちました。
    「よし、まずは足の大きさをしっかり測らなくちゃ!」
    男の人は紐を取り出すと、自分の足の長さを丁寧に測り、印をつけました。
    「うん、これで完璧だ!この紐さえあれば、ぴったりの靴が買えるぞ!」
    男の人は満足そうに頷くと、市場へ向かいました。

    市場に着いて、いざ靴屋さんへ!
    「さて、どの靴にしようかな?」と、靴を選ぼうとしたその時です。
    「あれ?大変だ!」
    男の人はポケットを探りましたが、さっき測ったはずの紐がありません。
    「家に忘れてきちゃった!これじゃあ、どの靴がいいかわからないや。」
    男の人は大慌てで、また家へと走って戻りました。

    「あった、あった!これこれ!」
    紐をしっかり握りしめて、男の人は再び市場へと急ぎました。
    ところが、市場に戻ってみると、もう夕方。たくさんのお店が閉まり始めていて、靴屋さんも片付けをしているところでした。
    「あーん、間に合わなかった…」
    男の人はがっかりして、その場にしょんぼりと座り込んでしまいました。

    それを見ていた人が、不思議そうに男の人に聞きました。
    「どうしたんだい?そんなに慌てて戻ってきたのに、靴は買えなかったのかい?そもそも、靴なんて履いてみれば、自分の足に合うかどうかわかるじゃないか。」

    すると、男の人はきっぱりと言いました。
    「いやいや、とんでもない!私は自分の足よりも、ちゃんと測ったこの紐の方を信じているんですからね!」

    周りの人たちは、顔を見合わせて、ちょっぴり首をかしげたそうです。

    1350 閲覧数