棗の丸呑み
中国寓話
むかしむかし、というほど昔でもないかもしれませんが、あるところに、ちょっと変わった考え方をする男の人がいました。
この男の人は、甘いものがだーいすき!でも、酸っぱいものや苦いものは、うーん、ちょっと苦手でした。
ある日、知り合いの物知りおじいさんがこう言いました。
「梨(なし)という果物はね、歯にはとても良いけれど、お腹(脾臓のことですが、ここではお腹としますね)にはあまり良くないんだよ。反対に、棗(なつめ)という果物は、お腹には良いけれど、歯にはちょっと良くないんだ。」
それを聞いた男の人は、ぴかーん!とひらめきました。
「そうだ!棗を食べる時、噛まないで丸ごとごっくんと飲み込んじゃえばいいんだ!そうすれば、甘くてお腹に良い棗はちゃんと体に届くし、歯には触れないから悪くならないぞ!これは名案だ!」
さっそく男の人は棗をたくさん買ってきました。そして、一つ、また一つと、ぽいぽい口に入れてはごっくん、ごっくん。本当に噛まずに丸ごと飲み込んでしまいました。
「うん、これなら完璧だ!甘いところだけお腹に届け!」と得意顔です。
でも、どうでしょう。
しばらくすると、男の人のお腹がなんだかごろごろ、きりきり…。痛くなってしまいました。
「あれれ?お腹に良いはずの棗を食べたのに、どうして痛いのかなあ?おかしいなあ。」
男の人は首をかしげました。
男の人は、棗の甘い美味しい部分だけじゃなくて、硬い種も一緒に丸ごと飲み込んでしまったので、お腹がびっくりして消化できずに痛くなってしまったのですね。それに、よく噛んで食べないと、どんなに体に良いものでも、その良さをちゃんと受け取れないのです。
この男の人、その後ちゃんと食べ物をよく噛んで食べるようになったかな?どうでしょうね。
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