邯鄲の歩み
中国寓話
遠い昔、燕(えん)という国に、ひとりの男の子がいました。
その男の子は、趙(ちょう)の国の都、邯鄲(かんたん)の人たちの歩き方が、とっても素敵だと聞きました。
「わあ、僕もあんなふうに格好よく歩いてみたいなあ!」
男の子はわくわくしながら、邯鄲へ向かいました。
邯鄲に着くと、町の人たちは本当に、まるで踊るように軽やかに歩いています。
「すごい!僕も練習しよう!」
男の子は、邯鄲の人の歩き方をじーっと見て、一生懸命真似をしました。
右足はこうかな?左足はこっち?
でも、なんだかうまくいきません。手と足が一緒に出ちゃったり、ロボットみたいにぎくしゃくしたり。
そうこうしているうちに、男の子は大変なことに気づきました。
「あれ?僕、もともとどうやって歩いてたんだっけ?」
なんと、邯鄲の人の歩き方を真似することに夢中になるあまり、自分のいつもの歩き方まで、すっかり忘れてしまったのです!
立つことはできても、どうやって足を出せばいいのか分かりません。
結局、男の子は歩くことができなくなり、四つん這いになって、とぼとぼと自分の国へ帰るしかありませんでした。
人の素敵なところを真似するのはいいけれど、自分の良いところを忘れちゃったら、大変だね。
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