杞憂
中国寓話
むかしむかし、空のことばかり考えて、夜もねむれないほど心配している人がいました。
この人は、「もし空がどーんと落ちてきたらどうしよう?地面がぐらぐらっと崩れたら、どこへ逃げればいいんだろう?」と、毎日毎日、ごはんも喉を通らないくらい悩んでいました。顔もだんだん青くなって、元気もなくなってしまいました。
それを見ていた親切な友達が、心配して声をかけました。「どうしたんだい?そんなに青い顔をして。何か心配事でもあるのかい?」
男の人はため息をつきながら言いました。「ああ、友達よ。僕は心配でたまらないんだ。もし、この大きな空が突然、ガラガラと音を立てて落ちてきたら、僕たちはみんなぺしゃんこになっちゃうじゃないか。それに、この地面だって、いつ崩れるかわからない。そうなったら、もうおしまいだ。」
友達はにっこり笑って言いました。「なんだ、そんなことを心配していたのかい。大丈夫だよ。空はね、たくさんの軽い空気が集まってできているんだ。いつも僕たちが息をしている、あの空気だよ。だから、重たくて落ちてくるなんてことはないのさ。毎日、太陽も月も星も、ちゃんと空に浮かんでいるだろう?」
男の人は少しだけ顔を上げましたが、まだ不安そうです。「でも、地面は?地面が崩れたら、やっぱり大変だよ。」
友達はまた優しく言いました。「地面も大丈夫。ほら、こんなにしっかりしているだろう?土や石がぎゅっと固まってできているから、僕たちがジャンプしても、お家を建ててもびくともしないんだよ。毎日、僕たちはこの地面の上を歩いたり走ったりしているじゃないか。」
男の人は、友達の言葉をじっと聞いて、やっと安心しました。「そっかあ。空も地面も、そんなに心配することなかったんだね!空は空気でできていて、地面は土や石でしっかりしているんだ。」
それからというもの、男の人はごはんもおいしく食べられるようになり、夜もぐっすり眠れるようになりました。空を見上げても、にっこり笑えるようになったのです。心配事がなくなって、毎日を楽しく過ごせるようになりましたとさ。
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