• 狐と老婆

    イソップ寓話
    コンコン、コンコン。お腹をぺこぺこにすかせたキツネが、森の中をしょんぼり歩いていました。
    「あーあ、何か美味しいもの、落ちてないかなあ」キツネは鼻をクンクンさせました。
    そのとき、どこからか、とってもいい匂いがしてきました。「おや? この匂いは…」
    匂いをたどっていくと、森のはずれに小さなお家がありました。窓からは、おばあさんが大きな鍋でコトコト何かを煮ているのが見えます。
    「わあ、あれはきっと美味しいお肉だ!よし、おばあさんをだまして、あのお肉をいただいちゃおう!」キツネは悪い顔でニヤリ。

    キツネは、できるだけ優しい声を作って、戸をトントンと叩きました。「おばあさん、おばあさん、いらっしゃいますか?道に迷った旅の者です。少し休ませていただけませんか?」
    おばあさんは、戸の向こうで声を聞いて、すぐにピンときました。「おや、この声はキツネだね。また何か悪だくみをしているに違いない。」
    でも、おばあさんは慌てません。にっこり笑って言いました。「あらあら、旅の方、お困りでしょう。どうぞお入りくださいな。ちょうど、体が温まる熱いスープを作ったところですよ。これを飲んで、元気を出してください。」
    キツネは「しめた!」と心の中で叫びました。「ありがとうございます、おばあさん!では、お言葉に甘えて…」そう言って、戸のほんの少しのすき間から、鼻先をグイッと中に入れようとしました。

    その瞬間!おばあさんは、用意していた熱々のスープ(本当は、ただの沸かしたお湯だったかもしれません!)を、キツネの鼻先にジャーッとかけました!
    「アチチチチーッ!熱い、熱いよう!」キツネはびっくりして飛び上がり、大慌てで森の奥へ逃げていきました。鼻の先は真っ赤っかです。
    おばあさんは、戸口でクスクス笑いながら言いました。「悪いことをしようとすると、結局は自分が痛い目にあうのさね。」
    それからというもの、キツネはもう二度と、あのおばあさんの家には近づこうとしなかったそうです。おしまい。

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