• キツネと病気のライオン

    イソップ寓話
    森の奥の、大きな洞穴に、百獣の王ライオンが住んでいました。でもある日、ライオンは病気になってしまいました。「ゴホゴホ、うーん、体がだるいぞう。」ライオンは洞穴から一歩も出られなくなってしまいました。

    そこでライオンは、森の動物たちに言いました。「みんな、わしはお見舞いに来てほしいんだ。寂しいからね。心配いらないよ、病気で弱っているから、誰も襲ったりしないよ。」

    それを聞いて、優しい動物たちが次々とお見舞いにやってきました。ウサギさん、シカさん、イノシシさん…みんなライオンの洞穴に入っていきました。でも、不思議なことに、洞穴から出てくる動物は一匹もいませんでした。

    しばらくして、賢いキツネがやってきました。キツネは洞穴の入り口で立ち止まり、中をじーっと見ていました。
    ライオンが中から声をかけました。「おお、キツネくんじゃないか。どうしたんだい?中に入ってこないのかい?」

    キツネはにっこり笑って言いました。「ライオンさん、お加減はいかがですか?でも、ちょっと気になることがあるんです。この洞穴の周りには、中へ入っていく足跡はたくさんあるのに、外へ出てくる足跡が一つも見当たらないんですよ。だから、僕はここで失礼しますね。」

    そう言って、キツネはくるりと背を向けて、森の奥へ帰っていきました。賢いキツネは、ちゃんと周りをよく見て、危ないことには近づかなかったのですね。

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