森の奥、静かな泉のほとりで、一頭の鹿が水を飲んでいました。ふと水面を見ると、自分の姿が映っています。

「まあ、なんて立派な角なんだろう！キラキラして、まるで王冠みたいだ。本当に美しいなあ。」
鹿は自分の角に見とれて、うっとりしました。

でも、次に自分の足が水面に映ると、鹿はため息をつきました。
「それに比べて、この足は…なんて細くてみすぼらしいんだろう。こんな足、全然かっこよくないや。がっかりだなあ。」

そのときです！茂みの中から、ガオーッ！と大きなライオンが飛び出してきました。
「うわー！ライオンだ！」
鹿はびっくりして、一目散に逃げ出しました。

あの細くてみすぼらしいと思っていた足で、鹿は一生懸命走ります。すると、どうでしょう！足は思ったよりずっと速くて、ライオンをぐんぐん引き離していきます。
「やった！この足、意外とすごいじゃないか！」
鹿は少し嬉しくなりました。

ところが、森の木がたくさん生えている場所に入ったとたん、大変なことが起こりました。あの自慢だった立派な角が、木の枝にガシッと引っかかってしまったのです！
「うわあ、大変だ！」
鹿はもがきましたが、角はびくともしません。

そうこうしているうちに、ライオンが追いついてきてしまいました。
鹿は心の中で思いました。
「ああ、僕がみすぼらしいと思っていた足が僕を助けてくれたのに、自慢だった角のせいで捕まってしまうなんて…。」

見た目が立派なものがいつも役に立つとは限らないし、見た目が頼りないものが役に立たないとも限らないのですね。

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