鹿とぶどうのつる
イソップ寓話
森の奥深く、太陽の光がきらきらと降り注ぐ場所に、一頭の立派な角を持つ鹿がいました。その鹿は、自分の美しい角をいつも自慢に思っていました。
ある日のことです。遠くから猟師たちの声と、犬の吠える音が聞こえてきました。「わんわん! 大変だ、追いかけられている!」鹿はびっくりして、全速力で逃げ出しました。息を切らして走っていると、目の前にぶどうの木がたくさん茂っている場所を見つけました。「ここなら隠れられるかもしれない!」鹿は急いで、ぶどうの葉っぱの間に体を滑り込ませました。
ぶどうの葉はふさふさと生い茂っていて、鹿の体をすっぽり隠してくれました。やがて猟師たちがやってきましたが、ぶどうの葉に隠れた鹿には気づきません。「あれ?どこへ行ったんだろう?」猟師たちは首をかしげながら、そのまま通り過ぎていきました。
「ふう、助かったあ。」鹿はほっと一息つきました。猟師たちがいなくなって安心すると、急にお腹が空いてきました。ふと見ると、自分を隠してくれたぶどうの葉が、とてもおいしそうに見えます。「ちょっとくらいなら、食べてもいいかな?」鹿はそう思って、ぶどうの葉をむしゃむしゃと食べ始めました。
その時です。葉っぱがガサガサと揺れる音を聞きつけて、さっきの猟師たちが戻ってきてしまったのです。「おや?あそこに何かいるぞ!」猟師たちは、ぶどうの葉を食べている鹿をすぐに見つけてしまいました。
「ああ、僕を助けてくれたぶどうの木を食べてしまうなんて…」鹿は後悔しましたが、もう手遅れでした。
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