鹿と獅子の洞穴
イソップ寓話
森の奥深く、動物たちが仲良く暮らしている場所に、一頭の大きな鹿が住んでいました。
ある日、この鹿さんは病気になってしまいました。「ああ、体がだるいよ。誰かお見舞いに来てくれないかなあ」と大きな声で言いました。その声を聞いて、森の動物たちは心配して、次々とお見舞いにやってきました。
最初にやってきたのは、ぴょんぴょん跳ねるウサギさん。「鹿さん、大丈夫ですか?」
次にやってきたのは、ちょこちょこ走るリスさん。「何かお手伝いできることはありますか?」
そして、のっそり歩くクマさんもやってきました。「早く元気になってくださいね。」
動物たちはみんな、鹿さんの洞穴の中へ入っていきました。
しばらくして、賢いキツネさんも、鹿さんの様子を見に行こうとしました。でも、洞穴の入り口で、キツネさんは足を止めました。「おや?」
地面には、たくさんの足跡がついています。でも、なんだか変です。洞穴に入っていく足跡はたくさんあるのに、出てくる足跡が一つも見当たらないのです。
キツネさんは首をかしげました。「うーん、これはおかしいぞ。みんな、洞穴に入ったきり、出てこないなんて…もしかして…」
キツネさんは、そーっと後ずさりして、洞穴には入らずに帰ることにしました。
「鹿さん、お大事にね!」と遠くから声をかけるだけにして、急いでその場を離れました。
キツネさんは、他の動物たちの足跡を見て、危ないことになんとなく気づいたのですね。賢いキツネさんは、用心深かったおかげで、無事でした。
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