神様たちが空の上で楽しく暮らしていた頃のお話だよ。

その中に、ヘルメスという、足の速い神様がいたんだ。彼は、神様たちの間で手紙を届けたり、いろんなお知らせを伝えたりする、とっても大切な役目をしていました。

ある日、ヘルメスはふと思いました。「人間たちは、僕のこと、どれくらいすごいって思ってるのかな？」知りたくてたまらなくなったヘルメスは、こっそり人間の姿に変身して、町へ下りてみることにしました。

町を歩いていると、素敵な彫刻がたくさん並んでいるお店を見つけました。お店の人は、石や木で神様の像を作っていたのです。

ヘルメスは、まず一番立派なゼウス様の像を見つけました。「これはおいくらですか？」ヘルメスが尋ねると、お店の人はにっこり笑って、「これは百枚の金貨ですよ。一番偉い神様ですからね」と答えました。

（ふむふむ、さすがゼウス様だ）とヘルメスは思いました。

その隣には、ゼウス様の奥さん、ヘラ様の像がありました。「では、こちらは？」と聞くと、「そちらは八十枚の金貨です。とても美しい女神様ですから」とのこと。

（なるほど、ヘラ様も人気なんだな）ヘルメスは心の中で（よしよし、僕の像はきっともっと高いぞ！）と思いました。何しろ、僕は神様の使いだし、商売の神様でもあるんだから！

そして、自分の像を見つけて指さし、「じゃあ、このヘルメスの像は、さぞかしお高いんでしょうね？」と、ちょっと得意そうに聞きました。

すると、お店の人は言いました。「ああ、それですか。もしお客さんがゼウス様とヘラ様の像を両方買ってくださるなら、そのヘルメスの像は、おまけで差し上げますよ」

ヘルメスはびっくり！そして、ちょっぴりしょんぼりしてしまいました。自分が思っていたほど、人間たちは自分のことを高く評価してくれていなかったのです。

ヘルメスは、うぬぼれていた自分を少し反省して、また空の上の神様たちの世界へ急いで帰っていきましたとさ。

1484 閲覧数