狐とワニ
イソップ寓話
太陽がキラキラ輝くある日、大きな川のほとりで、キツネくんとワニさんがおしゃべりをしていました。
ワニさんは、ふんぞり返って言いました。「キツネくん、知っているかね? わしの一族は、それはもう、昔からずーっと偉いんだぞ!」
「へえ、どんなふうに?」キツネくんが首をかしげると、ワニさんはますます得意そうに胸を張りました。
「わしのご先祖様はな、この川で一番強くて、みんなから尊敬されていたんだ!この立派な硬い皮を見ろ!これがその証拠だ!」と、自分のゴツゴツした背中を叩いてみせました。
キツネくんは、ワニさんの背中をじーっと見つめてから、にっこり笑って言いました。「なるほどねえ。ワニさんのご先祖様がそんなに立派だったのなら、その素晴らしい皮は、きっと昔はもっとピカピカで、みんなが欲しがるようなカバンや靴にでもなって、大事に飾られていたんだろうねえ。でも、今のワニさんの皮は、誰も欲しがらないくらいゴツゴツしているみたいだけど?」
それを聞いたワニさんは、ぐうの音も出ませんでした。さっきまでの威張った態度はどこへやら、なんだか小さく見えました。
キツネくんは、「昔の自慢話より、今どうあるかが大事だよね」とだけ言って、ぴょんと跳ねて、森の方へかけていきました。
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