狼と痩せた犬
イソップ寓話
お腹をペコペコにすかせたオオカミが、食べ物をさがして森の中をウロウロしていました。
すると、向こうから一匹の犬がトコトコやってくるのが見えました。でも、その犬はガリガリにやせていて、あばら骨が見えるほどです。
オオカミは「しめた!ごちそうだ!」と喜びましたが、犬があまりにやせているのを見て、ちょっとがっかりしました。
「うーん、これじゃあ、ひとくちで終わっちゃうなあ」
それでもお腹がすいていたオオカミは、犬に飛びかかろうとしました。
犬はブルブル震えながら、必死で言いました。
「オオカミさん、お願いです! 今の僕は骨と皮ばかりで、食べても美味しくないですよ。実は、僕のご主人の家で、もうすぐ娘さんの結婚式があるんです。」
「結婚式だと?」オオカミは少し興味を持ったようです。
「はい!結婚式では、お客さんたちがたくさんのごちそうを残します。それを毎日食べていれば、僕はすぐにまるまると太って、もっともっと美味しくなりますよ!その時になったら、どうぞ僕を食べてください!」
オオカミはそれを聞いて、なるほどと思いました。
「確かに、今食べるより、太ってからの方がずっといい。よし、待ってやろう。」
オオカミは、「わかった。じゃあ、太ったらまた会いに来るぞ。逃げるんじゃないぞ!」と言って、犬を行かせてやりました。
何日かして、オオカミは「そろそろ犬も太った頃だろう。今日はごちそうにありつけるぞ!」とウキウキしながら、犬の家へ行ってみました。
すると、犬は家の屋根の上にちょこんと座って、気持ちよさそうに日向ぼっこをしています。前よりも少しふっくらしているようです。
オオカミが下から大きな声で呼びかけました。
「おい、犬くん!約束通り、迎えに来たぞ。さあ、ごちそうになるから、下りてこい!」
すると犬は、屋根の上からニコニコしながら言いました。
「やあ、オオカミさん、こんにちは! もしあなたが、この前僕が言ったことをまだ信じていて、僕が下りてくるのを待っているのなら、それはずーっと待つことになりますよ!賢い犬は、一度逃げたら二度も同じ手には引っかからないものですからね!」
オオカミはそれを聞いて、がっくりと肩を落とし、お腹をグーグー鳴らしながら、とぼとぼと森へ帰っていきました。
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