• 蛙の医者

    イソップ寓話
    ある日、静かな池のほとりで、一匹のカエルが大きな声で言いました。
    「みんなー!聞いておくれ!わしは、どんな病気も治せる名医なんだゲコ!風邪だって、お腹が痛いのだって、わしにかかればあっという間に治してみせるゲコよ!」

    森の動物たちは、その声を聞いて集まってきました。ウサギさん、リスさん、タヌキさん、みんな興味津々です。
    「へえ、カエルさんがお医者さん?」
    「本当に何でも治せるの?」
    動物たちは口々に言いました。

    カエルは得意そうに胸を張って言いました。
    「もちろんだゲコ!わしは特別な薬草も知っているし、難しい手術だってお手の物ゲコ!」
    カエルは、いかにも自分が偉いお医者さんのように、ゲコゲコと大きな声で説明を続けました。

    そのとき、一番後ろで話を聞いていた賢いキツネさんが、ゆっくりと前に出てきました。そして、カエル先生をじーっと見つめて、首をかしげながら言いました。
    「ふーむ。カエル先生、それは素晴らしいですな。でも、ひとつお聞きしてもよろしいかな?」
    「なんだね、キツネくん。遠慮なく聞きたまえゲコ。」カエルは少しもったいぶって言いました。

    キツネさんはにっこり笑って言いました。
    「カエル先生、あなたご自身は、なんだか顔色があまり良くないように見えますし、それに、その足も少し引きずっていらっしゃるようですが…。ご自分の体の調子は、あまり良くないのではゲコ…じゃなくて、ないのですかな?」

    カエル先生は、キツネさんの言葉にドキッとしました。
    「えっ?あ、いや、これは…その…ちょっと疲れているだけゲコ…」
    カエル先生はしどろもどろになりました。自分の顔色が悪くて、足を引きずっているのは、本当のことだったのです。

    それを見ていた他の動物たちは、くすくす笑い出しました。
    「本当だ、カエル先生、顔が青いよ。」
    「自分の病気も治せないのに、どうやって私たちの病気を治すの?」

    カエル先生は、顔を真っ赤にして、何も言えなくなってしまいました。そして、恥ずかしくて、ぴょーんと池の中に飛び込んで、スイレンの葉っぱの下に隠れてしまいましたとさ。

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