• 馬と驢馬

    イソップ寓話
    太陽がぽかぽか暖かい、ある日のこと。一人の男の人が、馬とロバを連れて市場へ出かけるところでした。

    ロバの背中には、それはそれは重たい荷物が山のように積まれています。「よいしょ、こらしょ」ロバは汗をだらだら流しながら、一歩一歩、ゆっくりとしか進めません。
    一方、馬の背中はピカピカ。荷物はほんのちょっぴりか、あるいは何も乗っていませんでした。馬は鼻歌でも歌いそうなほどご機嫌で、軽やかに歩いています。

    しばらく行くと、ロバはもうへとへとです。息も絶え絶えに、馬に頼みました。
    「馬さん、馬さん、お願いだから、私の荷物を少しだけ持ってはくれないだろうか。このままじゃ、私、倒れてしまいそうだよ。もし私が倒れたら、私の荷物も、それから…私の皮も、全部君が運ぶことになるんだよ。」

    でも、馬はぷいっと横を向いて言いました。
    「ふん、それは君の仕事だろう?僕は自分の分だけで十分さ。君の荷物まで持つなんて、まっぴらごめんだね。」

    ロバは悲しそうな顔をして、また重い足取りで歩き始めました。でも、もう限界でした。とうとう、ロバは道端にばたっと倒れてしまい、動かなくなってしまいました。

    男の人はびっくりして、そして困りました。
    「ああ、かわいそうに。でも、荷物を市場まで運ばないわけにはいかないし…仕方ない。」
    男の人は、ロバが運んでいた重たい荷物を全部、馬の背中に積みました。それだけではありません。かわいそうに、倒れたロバの皮まで、その荷物の上に乗せたのです。

    馬は、ずっしりと重くなった荷物を背負って、とぼとぼと道を歩きながら、心の中でつぶやきました。
    「ああ、なんて馬鹿なことをしたんだろう。あの時、ロバさんの荷物を少しでも持ってあげていれば、こんなことにはならなかったのに。自分のことばかり考えて、ロバさんを助けなかったから、結局もっと大変なことになっちゃった…。」

    馬は、重い荷物と後悔を背負って、市場までの長い道のりを、しょんぼりと歩いていくのでした。

    1803 閲覧数