• 狐と山羊

    イソップ寓話
    森のはずれに、一匹のずる賢いキツネが住んでいました。名前はコンタです。
    ある日、コンタは野原を散歩していると、うっかり古い井戸の中にどっすーんと落ちてしまいました。
    「しまった!どうしよう!こんな深い井戸、一人じゃとても出られないぞ!」
    コンタは困って、井戸の底でウロウロしていました。

    そこへ、のどがカラカラになったヤギのメエさんがやってきました。
    メエさんは井戸をのぞきこんで、コンタを見つけました。
    「あれ、コンタさんじゃないか。そんなところで何してるんだい?そこの水は美味しいのかい?」

    それを聞いたコンタは、ニヤリと笑って(しめしめ、助かるチャンスだ!)と思いました。
    そして、わざと美味しそうな声で言いました。
    「やあ、メエさん!ここの水は最高だよ!冷たくて、甘くて、今まで飲んだ中で一番さ!君も降りてきて、一緒に飲まないかい?」

    のどが渇いてたまらなかったメエさんは、コンタの言葉をすっかり信じ込みました。
    「本当かい?じゃあ、僕もいただくよ!」
    メエさんは、何も考えずにピョーンと井戸の中に飛び込みました。

    メエさんがゴクゴクと美味しそうに水を飲んでいる間に、コンタは「ちょっと失礼するよ」と言うと、メエさんの広い背中にピョンと飛び乗り、それからメエさんの立派な角を足場にして、ヒョイっと井戸の外へ飛び出しました。

    「あー、助かった!ありがとう、メエさん!」
    コンタはそう言うと、井戸の中にいるメエさんのことなんか知らんぷりして、さっさと森の奥へ走って行ってしまいました。

    井戸の中には、びっくりしてポカーンとしているメエさんだけが残されました。
    「えええ?コンタさーん!僕も出してくれよー!」
    メエさんの声は、誰もいない井戸の中にむなしく響くだけでした。
    メエさんは、よく考えないで行動すると大変なことになるんだなあと、しょんぼりしたのでした。

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