• 雄鶏と宝石

    イソップ寓話
    ある晴れた朝のことです。にわとり小屋のコケコッコーさんが、今日も元気いっぱいです。
    「コケコッコー!お腹がすいたなあ。何かおいしいものはないかな?」
    コケコッコーさんは、庭をてくてく歩きながら、地面をくちばしでつんつん、足でカリカリと引っ掻いて、朝ごはんを探していました。ミミズさんか、小さな虫さんか、それともおいしい穀物の一粒でも見つからないかな、と一生懸命です。

    そのとき、足元で何かがキラリと光りました。
    「おや?これはなんだろう?」
    コケコッコーさんが土をどけてみると、そこには見たこともないほど美しい、ピカピカの石ころが転がっていました。太陽の光を浴びて、赤や青、黄色にキラキラと輝いています。それは、人間が見たら大喜びするような、高価な宝石だったのです。

    コケコッコーさんは、その宝石をじーっと見つめました。
    「わあ、きれいだなあ。ピカピカして、太陽みたいだ」
    と、一瞬思いました。でも、すぐに首をかしげて、こう言いました。
    「うーん、確かにとってもきれいだけど、これじゃあお腹はいっぱいにならないなあ。僕にとっては、たった一粒の麦やトウモロコシのほうが、このキラキラ光る石ころよりもずっとずっと価値があるよ。だって、お腹がペコペコの時には、食べられるものが一番だもの!」

    そう言うと、コケコッコーさんはその美しい宝石をくちばしでポイッと脇にどけて、またせっせと地面を引っ掻き始めました。おいしい虫さんか、小さな穀物を見つけるためにね。
    キラキラ光る宝石は、コケコッコーさんにとっては、ただのきれいな石ころだったのです。

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