ガラスの棺
グリム童話
ある日、腕のいい仕立て屋さんが、深い森で道に迷ってしまいました。夜になり、お腹もペコペコ。「どうしよう」と思っていると、遠くに小さな明かりが見えました。
「助かった!」仕立て屋さんは明かりに向かって歩きました。そこには小さなおじいさんが住む小屋がありました。
おじいさんは親切に仕立て屋さんを招き入れ、温かいスープをくれました。その時、外で大きな音がして、立派な角の牡鹿と、もう一頭の牡鹿が激しく戦っていました。結局、立派な角の牡鹿が勝ちましたが、おじいさんはなぜか悲しそうでした。
仕立て屋さんは疲れていたので、すぐに眠ってしまいました。
次の朝、ドーン!という大きな音で目が覚めました。びっくりして周りを見ると、そこは小屋ではなく、広くて立派な広間でした。そして、部屋の真ん中には、キラキラ光るガラスの棺が置かれていたのです。
そっと近づいて中をのぞくと、まるで眠っているような美しいお姫様が横たわっていました。
棺のそばには、二つのガラスの箱がありました。一つには小さなお城の模型が、もう一つには一枚の紙が入っていました。
紙にはこう書かれていました。「このお姫様は悪い魔法使いに呪いをかけられ、眠っています。お城の模型にある小さな金の鍵を回せば、呪いは解けるでしょう。」
仕立て屋さんは勇気を出して、お城の模型の鍵をそっと回しました。カチリ。
すると、ガラスの棺がパカッと開き、お姫様がゆっくりと目を開けました。「まあ、助けてくださったのですね!」
その時です!部屋の扉がバーンと開き、真っ黒な大きな牛が「モーッ!」と叫びながら入ってきました。それは、お姫様に呪いをかけた魔法使いが変身した姿でした。
お姫様は叫びました。「あの牛をやっつけてください!あれが魔法使いです!」
仕立て屋さんは勇敢に牛に立ち向かいました。すると、どこからか、あの立派な角の牡鹿が現れて、牛に突進しました!牡鹿はとても強く、魔法使いの牛はついに倒れてしまいました。
牡鹿は、なんとお姫様のお兄さんだったのです。彼も魔法使いに鹿の姿に変えられていたのでした。おじいさんが悲しそうだったのは、お兄さん(牡鹿)が戦って傷つくのを心配していたからだったのですね。
魔法が解け、お姫様も、お兄さんも元の姿に戻りました。仕立て屋さんはお姫様と結婚し、みんなでいつまでも幸せに暮らしましたとさ。
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