森のなかのばあさん
グリム童話
深い深い森のそばに、小さな村がありました。その村に、とっても心優しいけれど、ちょっぴり不運な女の子が住んでいました。ある日、女の子はご主人さまたちと一緒に旅をしていましたが、森の中で悪い盗賊に襲われてしまいました。みんなは捕まってしまいましたが、女の子だけがなんとか逃げ出して、森の奥へ奥へと迷い込んでしまったのです。
夜になり、女の子はくたくた。お腹もぺこぺこです。「ああ、どうしよう…」と泣きそうになったとき、木の枝に一羽のフクロウが止まっているのを見つけました。フクロウは言いました。「ホー、ホー。どうしたんだい、お嬢さん?」女の子はびっくりしましたが、わけを話しました。
フクロウは「ついておいで」と言って、女の子を森の奥にある小さなお家へ案内しました。そこには、腰の曲がったおばあさんが一人で住んでいました。おばあさんは女の子に言いました。「ここで働いてくれるなら、泊めてあげよう。ただし、あの部屋のドアだけは、絶対に開けてはいけないよ。」女の子は「はい!」と元気よく返事をし、毎日一生懸命お掃除をしたり、お料理を手伝ったりしました。おばあさんの言うことは何でも聞きましたが、あのドアのことだけはずっと気になっていました。
ある日、おばあさんが出かけている間に、女の子はとうとう我慢できなくなって、そっとドアを開けてしまいました。部屋の中には、あのフクロウが大きな鳥かごに入っていました。そして、鳥かごの周りには、金銀宝石がきらきらと輝いていたのです!女の子が驚いて見ていると、フクロウが羽ばたき、小さな金の指輪が床に落ちました。女の子は慌てて指輪を拾い、ドアを閉めました。
おばあさんが帰ってくると、すぐに言いました。「おまえ、あの部屋を開けたね?そして、この指輪を見つけたろう?」女の子は正直に謝りました。すると、おばあさんはにっこり笑って言いました。「実は、わしは魔法でフクロウにされた王子なんじゃ。そして、この家も魔法で姿を変えられていた。君の優しさと、この指輪のおかげで、魔法が解ける!」
そう言うと、おばあさんはみるみるうちに若々しい王子様の姿に変わり、古びた家は立派なお城になりました。フクロウも、実は王子様の忠実な家来たちだったのです。王子様は女の子の優しさと勇気に感謝し、二人は結婚して、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
1381 閲覧数