• 三人の兄弟

    グリム童話
    とある静かな村に、お父さんと三人の息子が仲良く暮らしていました。お父さんはだんだん年をとってきたので、三人の息子たちに言いました。「わしが元気なうちに、誰にこの家をゆずるか決めたいんじゃ。そこで、お前たちにはそれぞれ旅に出て、一番すごい技を身につけてきてもらいたい。一番すごい技を身につけた者に、この家をあげよう。」

    息子たちは「はい、お父さん!」と元気よく返事をすると、それぞれ違う町へ修行に出かけました。

    一番上のお兄さんは、床屋さんになりました。彼はとても腕が良くて、お客さんの髪をあっという間に、それはそれはきれいに切ることができました。それだけじゃありません。なんと、走っているウサギのひげだって、あっという間に剃れちゃうんだ!ウサギはびっくりする暇もありません。

    二番目のお兄さんは、鍛冶屋さんになりました。彼は力持ちで、熱い鉄をカンカン叩いて、どんなものでも作れるようになりました。特に馬の蹄鉄を作るのが得意で、すごい速さで走る馬にも、ぴょいっと蹄鉄を打てるようになったんだ。馬は気づかずに走り続けてしまうほどでした。

    三番目の弟は、剣術使いになりました。彼は毎日一生懸命練習して、素晴らしい剣の腕前を身につけました。どんな大雨の中でも、一滴も濡れずに剣を振るえるようになった。まるで雨粒が彼を避けていくみたいにね!

    何年かして、三人の息子たちはお父さんの元へ帰ってきました。お父さんは息子たちの成長をとても喜びました。
    「さて、お前たちの技を見せてもらおうかのう。」

    まず、野原をウサギがぴょんぴょん跳ねて通りかかりました。
    「よし、長男よ、あのウサギのひげを剃ってみよ。」
    長男はさっとカミソリを取り出すと、あっという間にウサギの片方のひげだけをきれいに剃っちゃった!ウサギは気づきもしなかったよ。お父さんは「おお、見事じゃ!」と感心しました。

    次に、馬車がすごい速さでやってきました。よく見ると、馬の蹄鉄が一つ取れかかっています。
    「次男よ、あの馬に蹄鉄を打ってやれ。」
    次男は道具を手にすると、馬車が通り過ぎるほんの一瞬の間に、新しい蹄鉄をカチンコチンと打ち付けたんだ。馬はそのまま走り去っていったよ。お父さんは「うむ、これも素晴らしい!」と目を丸くしました。

    すると突然、空が暗くなって、ザーザーと大雨が降ってきました。
    「三男よ、お前の番じゃ。」
    三男はすっと剣を構えると、雨の中で踊るように剣を振るった。不思議なことに、彼の服は一滴も濡れていないんだ!お父さんは「なんとまあ、これもまたすごい技じゃ!」と大喜び。

    お父さんは困ってしまいました。
    「うーむ、みんな素晴らしい!誰か一人なんて選べないなあ。」
    しばらく考えて、お父さんはにっこり笑って言いました。
    「そうだ!みんなでこの家に一緒に住めばいいじゃないか!お前たちの技があれば、どんなことだってできるだろう。」

    三人の息子たちも大賛成。それからというもの、お父さんと三人の腕利き息子たちは、その家でいつまでも仲良く、そして楽しく暮らしたんだって。

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